【なぜ“津島”なのか】⑭ 棄民
vol. 21 2023-05-19 0
「原状回復」と「損害賠償」を求めた津島原発訴訟原告団の訴えに対して福島地裁郡山支部は、2021年7月30日、国と東電の責任を認めたが、「原状回復」の訴えは却下した。
「敗訴という印象を持った」。原告団団長・今野秀則さんの率直な感想だ。
原発事故前は人口約1400人、原告団はその半分の約700人。「そんな少数の国民のために膨大な国家予算をつぎ込んで山林など全地域を除染し、住民が帰れるようにするのは、経済効率的な面で理にかなわない」というのが国や裁判所の判断なのだろう。しかしそれは、「経済効率の観点から、国民の一部を切り捨てていくことであり、一人ひとりの日本国民の被害を見て見ぬふりをすることです。これはある津島という小さな地域の問題ではなく、日本全国、全世界で起こりえることで、それが『人間を切り捨てる』に繋がっていく」と秀則さんは言う。「ここで踏ん張らなければ、原発事故もなかったこと同然になってしまう」。