【なぜ“津島”なのか】⑬ 伝統文化
vol. 20 2023-05-15 0
秀則さんが物心ついた時から、田植え踊り、神楽が身近にあった。祖母は「秀坊(幼少期の名前)!神楽に頭噛んでもらえ。長生きするぞ!」と促したものだった。300年の長い歴史を持つ田植え踊りは、地域の豊作、住民の幸せな生活を祈願する伝統芸能だ。秀則さんも加わって、歌って調子をとる「くどき」を演じた。その歌を覚えるために、大先輩に歌をテープに吹き込んでもらい、通勤の車の中で懸命に覚えた。
演じるメンバーが足りなくなって、男性が農家の娘を女装して踊る「早乙女」役をまかされることになった。その時のことを語りはじめた秀則さんの言葉が途切れ、涙声になった。
「、歴史の中の・・・、人びとの平安を祈り、豊作を祈り、無事を祈る、その長い歴史の一部に自分もなったというか・・・そういう思いが・・・体中から突き上げてきて嬉しかったですね。・・・こういうことを踏まえて、地域の生活が成り立っているというか、歴史が育まれ、人びとに綿々と受け継がれて、将来に繋がっていく、そういう感覚が体中からあふれました・・・」