【なぜ“津島”なのか】⑥ 「津島の人に支えられた」
vol. 13 2023-04-06 0
インタビューした住民の中には、意見陳述にも語られていない、心の奥にしまい込んでいた思いを吐露してくれる人もいる。その一人が須藤カノさんだった。
カノさんは夫と離婚し、3人の子どもを抱えながら津島送った。一家心中さえ考えるほどの極貧生活だった。そんなカノさん一家を支えたのは、津島の住民だった。今日食べる米もないカノさん一家のために、そっとドアに米や味噌の袋をかけてくれた住民。「持ってけ!」と野菜を差し出す農民。知り合いの住民は、運動会やサイクリングに誘って励ましてくれた。「津島では貧乏だってけど、“生きてる!”という手応えあり、愚痴でもなんでも周りの人に言えた。しかし避難した福島市内ではそれがないの。“生きる喜び”、夢がないの」と吐露するカノさん。津島に嫁ぐ夢を見た。「夢は逆さだというから、帰れないということかなあ。帰れるわけないよな・・・・」