【なぜ“津島”なのか】⑤/歴史を刻む
vol. 12 2023-04-03 0
【なぜ“津島”なのか】⑤/歴史を刻む
原発事故から半年後、津島全住民が集められ、環境省の役人が「100年は帰れない」と告げた。住民は唖然とし言葉を失った。義人さんの脳裏に60数年も慣れ親しんだ赤宇木の風景が浮かんだ。「あそこはもうだめなんだ。じゃあなんとかしなければ」
義人さんが思い立ったのは、100年後の子孫に向けて、赤宇木の歴史を遺すことだった。
「自分たちの集落をよくしていこうという夢があった。そんな赤宇木の今までのことを記録に残しておかなければ」と考えたのだ。
「江戸時代の天明飢饉では村の人口は3分の1になった。それでも木や草の根を食べたりして繋いできた歴史がある。そんな祖先の気持ちを絶やすことができない。先祖たちが一生懸命生きてきた思いをどうしても伝えなければいけない。それを放射能のために流してしまうことは忍びないんです」。
編集に丸5年。約600ページの「100年後の子孫(こども)たちへ」の歴史書は2023年夏に出版される。