なぜ“津島”なのか】③自然の中で“足るを知る”生き方
vol. 10 2023-03-28 0
山々と田畑に囲まれた緑豊かな山間部。「『都会に出て、一旗揚げるんだ!』という野心はなかったですか?」と問う私に、今野義人さんは、「なかったね」と笑った。「『みんなと、この集落なんとかしないなあ』という気持ちはあったね」「自然がよかったんだよね。春夏秋冬、都会と違って、若葉から落ち葉まで、いっしょに生活できる」
「やっぱり自分を育ててくれた地域なのかなあ、人間関係にしろ、生活の場所にしろ、いいところだったからね」
欲ばらず、“足る”を知る気持ちで、与えられた生活環境に感謝して静かに黙々と生きる―そんな赤宇木での穏やかな生活。原発事故はそんな今野義人さんの平穏な日々を根こそぎ奪った。津島にはそんな素朴な人の生き方の原型が残っていたのだ。私はこの地域の住民たちに会って話を聴きたいと思った。