【なぜ“津島”なのか】② 取材の手引書「意見陳述集」
vol. 9 2023-03-25 0
津島住民の誰にインタビューすべきか。その手引書になったのは「津島原発訴訟 原告意見陳述集」だった。これまでの裁判公判で意見陳述をした約30人の原告の陳述を熟読し、その住民一人ひとりが原発事故前にどういう生活をしてきたのか、あの原発事故後、どう生きてきたのか、どういう問題を抱えてきたのか、その全体像が把握できた。
だからインタビューする時点で、その人から何を聞き出せるのか、何を聞き出したいのかの目安があった。2021年夏から半年ほどで効率よく約30人の原告たちにインタビューできたのは、「原告意見陳述書」のお陰である。
私がインタビューによって引き出したたかったのは、表層的な事象、経緯などではなかった。「原発事故による避難」「故郷喪失」が、その人にどういう心理的な変化、影響を与えたかである。それは、人が生きていくなかで何が大切なのか、生きるとはどういうことなのか、といった根源的な問いでもあった。