【なぜ証言映像なのか?】②
vol. 2 2023-03-04 0
「証言ドキュメンタリー映像」を本格的に試みたのは2019年春に劇場公開した「福島は語る」だった。2014年からほぼ4年をかけてかけ約90人にインタビューして完成したこの映画は、まさに試行錯誤の連続だった。
当初、インタビューした被災者の声を編集してみたが、『チェルノブイリの祈り』のように“胸に染み入る深さ”がない。原発事故後の自分や家族に起こった事象、生活環境の変化、その中で抱え込んだ「問題」は聞き取れてはいたが、語る人の内面、“深い心の傷”が十分に引き出せていなかったのだ。
それは私が向き合った証言者のせいではなかったと思う。証言者が言語化できず、心の奥底に沈殿させているその“深い”思いを引き出す力が“聞き手”の私に足りなかったのだ。それは私自身の“聞き手”としての、もっと言えば、それを引き出す“人間としての力量”が十分ではなかったのだと痛感する体験だった。
(写真)「福島は語る」の画面