【なぜ証言映像なのか?】①
vol. 1 2023-03-01 0
「人が語る言葉は、これほど人の心に響くのか!」。
証言集『チェルノブイリの祈り』(スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ著)の冒頭、消防士の妻の証言を読んだときの衝撃である。それまでチェルノブイリ原発事故の本や映像に触れ、「知っている」つもりだった。しかしあの時ほど原発事故の恐ろしさを実感した初めてだった。
単に「事象」や「問題」を語るのではなく、心の奥底からほとばしり出る深い思い、絶望、怒り、そして愛の言葉は、国や人種の違いを超えて、“普遍的な人間”の声として人の心を射抜く。
「こんな伝え方をしたい!」と私は心底願った。アレクシェーヴィチがすでに“活字”でそれを成し遂げた。ならば、長く関わってきた“映像”でそれができないか―私がいわゆる「証言ドキュメンタリー映像」に本格的にチャレンジし始めたのは、そんな経緯からだった。
- 前の記事へ
- 次の記事へ