制作日誌♯3:北丸雄二さん、現る
vol. 4 2019-01-14 0
北丸雄二さん、仔犬養ジンさん、マット・ボマー・ジャパンさんとご紹介していきます。このお三方なくして、企画は始まりませんでした。まずは、北丸雄二さんから。
北丸雄二さんとの出逢いは、私が19歳、地方の一大学生だったころにまで遡ります。
当時は、世界的にゲイカルチャーブームで、日本でも一世を風靡し、牽引していた雑誌「小説ジュネ」の存在もあって、書店の本棚は翻訳ゲイ小説が花盛りでした。なかでも、傑作『フロント・ランナー』(著:パトリシア・ネル・ウォーレン)に胸を打たれて、一晩で箱ティッシュを全部使い切ってしまうくらい泣いたのは、いまも鮮烈な記憶となって、私の脳裏に刻まれています。その翻訳家が北丸雄二さんでした。
北丸雄二さんは、翻訳家でもありますが、基本はジャーナリスト――しかも最前線の、ゴリゴリの新聞記者でした。(笑)
ジャーナリストが綴る翻訳小説というものを、私は、ゲイ小説によって初めて認識した気がします。やはりゲイ小説で、エイズ文学の代表的な作品『ボロウドタイム』(著:ポール・モネット)の翻訳家で、故人の永井明さんもそうですが、技巧のない、まっすぐに届く磊落な文体と、ちょっと体育会系っぽい(?)、力強く、地に足がついた男っぽいムードが、私には新鮮でした。そして、生き生きとしたリアリティある人間が登場するといった点では、ジャーナリストのお二方に共通していたと思います。
ともあれ、『フロント・ランナー』に感銘を受けた私は、のちに仕事を通じて、北丸さんと知り合うことになります。さらには著者、パトリシア・ネル・ウォーレンさんの、ロサンゼルスのご自宅まで、連れていっていただく機会にも恵まれました。
余談ですが、そのとき40代だった北丸さんは、海外の方に、20代の私と同じ年ごろに見えたほど、身も心もお若い方でした。しかも、20代の若かりし北丸さんのお写真を見せてもらったら、これが大変な美青年ぶりで、驚いたりもしましたっけ。もちろん、いまもハンサムですが。
こちらは、いまの北丸雄二さん。(OUT IN JAPANより)
それから、早20年の歳月が流れ――
ツイッターを見ていたら、北丸雄二さんが、「『ノーマル・ノート』を翻訳しているのだけど、どこか舞台にしない?」などと呟いているではないですか。