メンバー寄稿 Vol.3 「もしもあの時、知識があったなら」と思うから
vol. 39 2021-05-29 0
10年前に大地震と大津波があり、それだけでも怖いのに次の日から次々と原発が爆発した。
日本が終わるかもとも思ったけど、直ちに影響はない、という言葉もあった。
じゃあ普通に生活していていいのかな?
いったい、何が本当なのか?全然判断できなかった。
■この子たちを守りたい!手探りの測定しか、確かめようがなかった10年前
当時、保育園に子どもを預けて働きながら、子どもたちが食べる食べ物や水、通う学校の校庭、通学路、庭、公園、全てが不安だった。
行政や自治体が測定体制を整えるより先に、市民測定所ができ、測定が始まっていた。
新聞などで発表される遠くの作物の値より、いまスーパーに売られている、自分が買う食品の値を知りたかった。放射性ヨウ素が基準値を超えて水道水から検出され、「赤ちゃんは水道水を飲まないで!」と、粉ミルク用のペットボトルの水を学校まで取りに行くということが、私の住む東京でさえあったのだ。
それで、自分たちで測る、という活動に参加するようになった。放射能の単位や放射性物質の名前だって初めて聞いた!という感じからスタートして、右往左往しながら、放射能に関わってきた。そもそも東京の電気を福島の原発で作ってもらっていたことも知らなかった。本当に無知で無関心だったと思う。
その市民測定室で、縁あって全国の市民測定室のネットワーク団体、「みんなのデータサイト」ができる場面に企画時から立ち会うことになって、事務局として関わるようになって、今に至る。人々を被ばくから守りたいと願い活動する団体や、測定してから出荷したい農家さんなど、様々な理由で全国に測定を始めた方々がいて、30以上の団体がつながり合って活動してきた。その真摯で寡黙で口下手で、測ることに一生懸命な測定室の方々を、裏方から支えるのが私の役目だと思って活動してきた。
■この国は国民を守らないと知った
放射能を測り始めてから、テレビや新聞などの報道からは全く伝わってこない現実があることを知った。 除染のこと、福島県の子どもたちの甲状腺検査のこと、避難の基準のこと、裁判のこと、そして世界とのつながり・・・ 色々なことを1つずつ知ることになった。
まだモヤモヤしてることもあるけど、1つはっきり判ったことは、この国は国民や人々の命を守るよりも経済が優先なんだってこと。
この国のコロナ対策でもわかるように、なるべく数値を出さない、明らかにしない、小さく見せる、なかったことにしようとする力がものすごく大きい。
だから、自分たちが測定できることは、唯一の武器だし、ねばりづよく1つ1つ測って実測した測定値という数字は、政治とか経済の屈しない唯一の「真実」なんだと知った。
正しい数字がわからないで、判断はできない。 自分たちの数字を持たないと、国に言われた値を鵜呑みにするしかない。国は細かく測らない、間違っていることも、誤魔化してることもある。だから自分たちで測って知ること、確かめることは大切なんだ。って思った。
2018年 東京新聞
■これからやりたいこと
事故から10年。 食品では、地域によって、いまだに放射性セシウムが検出され、基準値を超えることもある タケノコや山菜、野生のキノコなどを測定していく必要がある。放射性セシウム137は30年経たないと半分にならない。100年経ったらようやく10%にまで減る、という具合。だからここからは本当になかなか減っていかない。
土壌の測定では、西日本でも測って日本全国の地図をつくりたい。2016年から18年まで行った東日本土壌ベクレルプロジェクトの地図には西日本や沖縄が載ってない。だから西日本土壌ベクレルプロジェクトの計画があったが、昨年の新型コロナウィルスの蔓延により、プロジェクトは頓挫したまま。
行政の測定はどんどん数が減っているし、ほんとうに?って思うやり方の時もありえる。その時に私たちが、オンブズマン的な役割を果たさないといけない。
そして、10年前の事故直後に、どこで誰がどれだけの放射能を浴び、吸ってしまったのか、その後どれだけ被ばくしているかは、誰もわからない。
だから、せめて、測定が可能な放射性セシウムの記録だけでも詳細に残し、今すでに出ている、そして今後出てくるかもしれない健康被害との因果関係を解き明かす1つの材料になればと思う。
それから、この10年の市民測定のノウハウを記録として残すこと。これもどうしてもやりたい。全国には50以上の原発があって、どこで次の事故が起きてもおかしくないのだから。
その時にすぐに測定活動できるためには、測定器の精度を保ち、測定の方法も忘れていてはならない。けれど、10年の時が経ち、測定室の皆さんも(もちろん私も)当時に比べると10年歳をとった。先輩方の貴重な経験や知識を次の世代になんとしても「わかりやすく」記録に残して、引き継ぎたいと思っている。
わたしの10年前のように、「知らない」がために できるはずのアクションを知らず、判断を間違わないように。
あなた自身やあなたの家族や子どもや孫世代を守ることができるように、あと少し、活動を続けたい。
そのための資金協力をどうかお願いします。
みんなのデータサイト事務局 中村奈保子
https://motion-gallery.net/projects/the10thfukushi...
クラファン終了まであと13日、現在の達成率は36%