メンバー寄稿vol.2 「測らねば」阿部浩美
vol. 32 2021-05-14 0
市民による放射能測定の実情や、10年間にわたり活動を続けてきた測定室について、また今回のクラウドファンディングの目的について知っていただきたく、プロジェクトメンバーによる特別寄稿を3回にわけてお送りします。
1回目は、NPO法人 ふくしま30年プロジェクト副理事長の阿部浩美が、原発事故後の活動の実態について語ったコラム「測らねば」をお送ります。 ぜひお読みください。
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今から8年前の2013年5月8日、朝日新聞が福島市内の複数の公共施設内にホットスポットがあることを報じました。
朝日新聞デジタル:福島の駐車場、土から高濃度セシウム 立ち入り禁止に - ニュース特集 http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201305070424.html
それらの施設は県立図書館と市立図書館・公会堂で、それぞれの駐車場内の複数の地点から1kgあたり1kgあたり10万ベクレルを越える堆積土が見つかりました。なかでも、市立図書館・公会堂の植え込み付近に堆積した土が最高値で1kgあたり43万ベクレルでした。
また、空間放射線量率についても市立図書館・公会堂の排水溝上がもっとも高く、1 mの高さで毎時3.8マイクロシーベルトを記録しました。
これらのホットスポットは、当時のふくしま30年プロジェクトスタッフがゴールデンウイーク中に、たまたま県立図書館に行った際に見つけたものです。駐車場の隅の吹き溜まりにドングリが集まっていたので、ガイガーカウンタ―をかざしてみると地面で毎時4マイクロシーベルトを示したということでした。
そこからゴールデンウイーク中に両施設の駐車場の調査をし、それを朝日新聞がスクープとして報じるとともに、福島県と福島市に除染の申し入れを行いました。
8年前の福島市と言えば除染はまだまだこれからという時期で、住宅除染を優先にしていました。
駐車場のような箇所は後回しにされることもあり、街中にはこのように発見されないだろうホットスポットが無数にありました。
しかし、それらをしらみ潰しに探して行政に申し入れをしていくのか?という逡巡が団体内にもあり、この後、ホットスポットを見付けての除染の申し入れをしていくことはなくなりました。
集まったメンバーそれぞれの考え方には幅があり、無数にあるホットスポットを発見、告発していくことは、賽の河原の石積みのような虚しさがあるという意見がありました。
また、ホットスポットを発見したとしても、その地域に居住する人すべてに歓迎されるわけではありません。セシウム134の最初の半減期を経て空間放射線量率が目に見えて下がる時期に、寝た子を起こすなという空気ができていきました。
人々が非常事態から日常へと回帰していくなかで、地域から求められることがほとんどない活動は自然と縮小していくことになりました。
それでも測定活動自体を続けてきたのは、なかったことにさせないためと言えます。
文科省事務次官だった前川喜平氏の「あったことをなかったことにはできない」という言葉を聞いて、「まさに」と思いましたが、2011年来の活動の根本はそれでした。人は忘れることで生きていくことができるというのも真ですが、絶対に忘れてはいけないこともあるはずです。
2011年4月、吾妻山は青い空を背に原発事故前と変わらぬ佇まいではありましたが、それでも自分の知る故郷の風景とは絶対的に違うとも感じました。あのときの喪失感を思い返すたびに、故郷の変わった姿を、変わりゆく姿を測り続けていかねばと思います。
阿部浩美
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市民による放射能測定を支援する同プロジェクトのクラウドファンディングは現在目標600万に対して1,301,000円、達成率21%。残りは28日です。シェア&ご支援をお願いいたします!