Road to "鉄工島FES"
vol. 20 2017-09-12 0
【ART: BUCKLE KOBO Presentationについて】
みなさん、こんにちは!!嬉しいことにあと一人で100名の方に応援していただいています!!なんだか桁が変わるのは嬉しいです!!最近は、毎日京浜島の島内の方にご挨拶にいったり下見をしたりの日々。今日は、BUCKLE KOBOに関係のあるアーティストを中心に、青木彬さんがキュレーションしてくださった展示「BUCKLE KOBO Presentation 根をもつことと翼をもつこと」についてです。(ここから以下は、文責:青木彬さんです!)
藤元明『2021』2016
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〈根をもつことと翼をもつこと〉をひとつのものとする道はある。それは全世界をふるさととすることだ。
真木悠介『気流の鳴る音』
東京、神奈川を中心に広がる京浜工業地帯。その名を冠した京浜島は1939年の計画以降、戦争による中断を挟みながらも日本の産業経済の発展を支えてきた人工島だ。工業用地として定められたこの島には様々な製造業の工場が集まり、職人たちの確かな技術力によって精巧な製品を今も造り続けている。遡れば江戸時代から埋め立てが続く東京湾という重層的な位相の中で、約1 km²のこの小さなものづくりの島は東京の高度成長期を支える一端を担ってきたのだ。しかし、徐々に工場の転廃業も増えたことで島の様相は変わり始めているという。
2016年、そんな京浜島のほぼ中央に位置する鉄工所の一角に誕生したBUCKLE KOBOも島の変化のひとつだろう。現在も稼働する工場の一部をアトリエとして活用し、ものづくりの歴史がある京浜島と多くのアーティストが出会うハブとなってきた。2020年に向かって刻々とその姿を変える東京を前にした私たちは、こうした島の変化にあらゆる空間は社会状況による規範や制度によって形づくられていたことを、そしてその空間が現代において持ち得る可能性を見過ごしていたことを感じ取らなくてはいけない。BUCKLE KOBOがアートを通じた創発の場として鉄工所を拓いたように、場の転用は既定された制度からの脱却であり、様々な記憶が刻まれた空間に新たな風を吹き込む未来へ向けられたふるまいだ。
多くの場所には決められた目的が固着し、行き先は常に与えられるものとなり、東京では壁の向こう側でいつの間にか知らない景色が出来上がっていく。私たちはもっと意識的に空間を拓き、最短の距離で結ばれていた道を逸れ、椅子1つ無い街路を、あらゆる場を私たちの居場所として取り戻さなくてはいけないのではないだろうか。
本展はBUCKLE KOBOを起点に湾岸エリアで起こる文化の胎動と、そこに投げかけられる5組のアーティストのふるまいの提示である。
BUCKLE KOBO Presentation
日程:2017年9月30日(土)〜10月1日(日)
入場:無料
会場:BUCKLE KOBO(東京都品川区東品川2-6-10)
※TENGAoneの作品は10月1日(日)のみの公開となります。
【アーティストプロフィール】
藤元明 (作品クレジット:藤元明『2021』2016)
1975年東京生まれ。1999年東京藝術大学デザイン科卒業。2000年コミュニケーションリサーチセンターFABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学大学院を修了。人の制御出来ない現象をモチーフに、絵画・オブジェクト・映像・インスタレーションなど様々な手法で制作される作品は、現代社会において一般化する制度や仕組みを利用することで、ジャンルレスなプロジェクトへと変容する。主な作品シリーズとして「2021」「Fountain」「NEW RECYCLE」などがある。都市の隙間を活用するアートプロジェクト「ソノ アイダ」を主催。
山田健二(作品クレジット:山田健二『Smurfed remain』2017)
山田健二は固有の文化圏に遺る民俗知や遺跡、戦争遺産を含む近代遺産などを国際社会の中で流用・誤用することで生まれる葛藤や矛盾を共有するための社会実践・表現活動を行なう美術家です。彼が生み出す表現やフィールドは観衆に自然環境と社会現象を透視するような、より中性的な感性を求め、同時にそれに伴う非常時的な想像力をかき立てます。
3.11以降、日本やヨーロッパを中心に各地を環境難民のように移動しながら続ける彼の活動は、より流動的な社会的立場の人間が国際社会にどう働きかけられるかという実践を含みながら、その臨界と限界に無数の段階を拡張し、新たな思考のグレースケールを浮かび上がらせます。
TENGAone(作品クレジット:TENGAone『fabrication 7』2017)
東京を拠点に活動しているストリートアーティスト。アーティスト名は「画が天職(天画)」から。「日常にある些細な「怒り」、育った環境の「寂しさ」、ストリートでの経験から感じた「人間の矛盾」をテーマに、スプレー缶での壁画、絵画、立体を制作。’08年、米・ロサンゼルスにて行われたW a l t Disney主催の企画展「BLOC28」へ、アジアからの招待アーティストとして参加。また近年では西武百貨店×SIDE COREブースに作品を出展。’15年、’16年にはART FAIR TOKYOに参加。以降、国内外の展覧会に多数参加するなど精力的に活動。
関川航平(作品クレジット:関川航平『片耳をふさぐ』2017)
2013年 筑波大学芸術専門学群特別カリキュラム版画コース卒業。主な展示に、「あざみ野コンテンポラリーvol.7 悪い予感のかけらもないさ展」(横浜市民ギャラリーあざみ野/2016)「figure / out」(ガーディアンガーデン/2017)「一枚の絵の力 Power of a painting」(BLOCK HOUSE/2017)「SICF18 PLAY」(スパイラル/2017)「BankART Life Ⅴ〜観光」(BankART1929/2017)など。
Aokid(作品クレジット:Aokid『blue+yellow,red』より 撮影:ShinichiroIshihara)
1988年東京生まれ。東京造形大学映画専攻在学中より、ダンス、パフォーマンス作品の発表を重ねる。aokid cityという名のイベントやパーティーの企画や、代々木公園、街中でのささやかな社会へのアクションを行う一方、ギャラリー空間での展示や劇場での上演作品も発表。近年の主な活動に『ぼくは"偶然のダンス"の上映される街に住んでいる。』(ガーディアンガーデン、2016)、ゲリラパフォーマンスイベント"どうぶつえん"の企画など。横浜ダンスコレクション2016年審査員賞受賞。
【キュレータープロフィール】
青木彬
1989年生まれ。首都大学東京インダストリアルアートコース(芸術学)卒業。
在学中に「ひののんフィクション」「川俣正 Tokyo In Progress」などのアートプロジェクトの企画・運営に携わる。 これまでの主な企画に、「特別講座『未来へ号』で行く清里現代美術館バスツアー!」(清里現代美術館、2014)、中島晴矢個展「麻布逍遥」(SNOW Contemporary、2017)などがある。
「SociallyEngagedArt展 社会を動かすアートの新潮流」(アーツ千代田3331、2017)キュラトリアルアシスタント、「黄金町バザール2017 Double Façade 他者と出会うための複数の方法」(横浜市、2017)アシスタントキュレーターを担当。