インキのことやら価格のことやら
vol. 9 2026-08-05 0
さて、今回の『TECH』をナタリ監督はすべてiPadで描かれています。つまり、完全なデジタル制作なのです。ここで大きな問題が1つあります。デジタルの世界では、赤緑青(RGB)の3色の"光"を組み合わせて色を作っていて、3色を全部混ぜると白くなります。白い光をプリズムで分けると虹になりますよね。あの逆です。すべての色を混ぜると白くなるのです。
一方、印刷はアナログです。リアルな物質は光を放つのではなく吸収します。一般的な4色印刷では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)のインキを使って色を作ります。絵の具と同じですから全部混ぜると真っ黒になります。性質がまったく異なるのです。
みなさんもパソコンで作った書類を印刷してみたら、ぜんぜん色が違っていた!なんて経験があるかと思います。
デジタル製版が普及してからもうずいぶん日が経ちますから、RGBで制作された画像をCMYKできれいに印刷する技術はとっくにできています。問題なくきれいに印刷できます。
ですが、今回の『TECH』ではところどころにデジタルならではの光っているような表現が使われていて(画面が発光しているので実際に光って見えるわけです)、この雰囲気を何とかアナログ印刷でも出せないだろうかと考えていました。
そこで登場するのが藤原印刷のプリンティングディレクター(=印刷監督)花岡さん。印刷のことは花岡さんに聞けばたいてい何とかなります。何とかしてくれます。
花岡さんからの回答は「4色のインキに、特殊な蛍光インキを混ぜれば、よりきれいに再現できるだろう」というものでした。なるほど、蛍光インキ! 使いたい!! 光らせたい!!
しかし、しかしです。
いま、中東情勢の影響で蛍光インキの価格がちょっと考えられないほど上がっているというのです。それでも、使えるなら蛍光インキを使いたいのですよ、僕は!と、念のために見積もりをお願いしたところ、やっぱりちょっと考えられないほどの価格でした。即座に高熱を出して倒れてもおかしくないほどの値上がり。いやあ、これは僕だけじゃなくて、日本中、世界中で蛍光インキを使いたいと考えていた人たちがひっくり返っているだろうなと思うほどです。
さすがに蛍光インキは断念せざるを得ません。それでも花岡さんはきっとCMYKの4色で、できるだけきれいな色になるように工夫をしてくださるはずなので、ここはもうお任せです。
それでもせっかくなら、なんとか粘りたいわけです。そこで、デザイナーの上田豪さんと話をして、本身(本そのもの、本体部分のことです)は断念するけれども、せめて表紙には蛍光インキを使ってみようという話になりました。
もともと下地に銀色を刷って、ちょっとだけ高級感を出そうとしていたところに、さらに蛍光インキです。はたしてどんな雰囲気になるのか、僕にはまだ見当もつきませんが、近いうちに色を確認するための試し刷り(印刷業界では色校正といいます)をしてみて、僕たちが狙っているような色になるのか、あるいはそれ以上になるのか、はたまた予想ほどではないのかを確かめる予定です。
色校正が出たら、あらためてこちらでご報告します。
そして、もう1つ。
さまざまな資材の物価上昇などに鑑みて、クラウドファンディングが終了したあと、一般書店や通販で『TECH』を販売するときの定価は上げようと思っています。
もともとの予定価格3,800円(+税)は、この手のフルカラー版グラフィックノベルにしてはかなり低価格でした。他の出版社から出ているものを見てみると、どうやらもっと高いようなのです。
それでは、いったいどうして、そんなに安い定価にしたのか。それは、僕が何も考えずに適当につけたからです。本当に何も考えていなかったのです。クラウドファンディングの目標を達成しても赤字になるのは、どうしてなのかなとずっと不思議だったのですが、やっとわかりました。先日、別件で会った出版社の人に「その価格はおかしいよ」と言われて、ようやく気づいたのです。
一般販売の価格をいくらにするかはまだ確定していませんが、おそらく4,500円くらいになりそうです。もちろんクラウドファンディングでの価格は変わりません。書籍のみなら送料・税込み3,800円のままです。つまり、このクラウドファンディングでご支援いただくほうが、かなりお得になりそうなのです。
ということで、みなさん、この『TECH』プロジェクトを一人でも多くの方にお知らせいただけると、本当に本当に助かります。知ってさえいただければ、中には関心を持っていただける方もいらっしゃるはずなのですが、とにかく知られていないのが悩みどころです。
ああ、ふだんからもっと社交的な生活をしておけば良かった、あまり親しくない人とも「最近どう?」みたいな軽いやりとりをしておけば良かったと、ちょっぴり後悔していますが、そもそも僕は部屋に籠もってコツコツ文章を書くのが本業なので、たぶん社交的な生活は無理です。知らない人たちの集まりに今からどんどん顔を出すなんてことも無理です。
なので、みなさんに頼るしかありません。どうか、このプロジェクトの拡散にご協力ください。
ものすごく長くなってしまいましたが、そんなご報告でした。
浅生鴨 拝
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