現代の茶人からの応援メッセージリレー vol.3
vol. 3 2019-06-26 0
現代の茶人からの応援メッセージリレー vol.3
<静岡・本山>森内茶農園 森内吉男さん
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日本茶ドキュメンタリー映画製作チームの高津です。
クラウドファンディング序盤、64名の方にご支援いただきました。
応援してくださる方が一人また一人と増えていくと、本当に嬉しく力をいただきます。
一方、まだクラウドファンディング成功のためのベンチマークには届いていない状況です。
ぜひ、ファンディング期間の前半で、日本茶の楽しさを知っている、日本茶にワクワクしている皆さまから熱を分けていただき、
後半戦でその熱をより遠くの方々、未来のお茶ファンまで届けていきたいと考えております!
ぜひ、皆様のご支援よろしくお願いします!!
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現代の茶人からの応援メッセージリレー第3弾は、
静岡のお茶の名産地・本山の森内吉男さんです。
摘みたての日本茶の鮮度感と山の香りを茶葉に閉じ込める。
その技は製茶(せいちゃ)と呼ばれます。
お茶農家さんの場合は、畑での栽培だけでなく、この製茶までできて、
初めて一流の茶農家になれるという点が特徴です。
森内さんは、栽培に加えこの製茶の名人であり、しかも、
手もみでの製茶にも機械での製茶にも熟達した名人です。
日本茶の中核である蒸し製緑茶において、
何をイメージしながら製茶を行うのか森内さんに質問したところ、
その答えは「摘みたての茶葉の色や香りを再現する」というものでした。
鮮度感というのは、摘みたての葉っぱってとってもいい匂いがするんですよ。甘いというか、清々しい香りというか、若葉の香りというか、それをね、いかに再現、急須でお茶淹れてそこに立ち上がる香りが、なんとか再現できるように、ちょうどそれを蒸している時の匂いと、蒸している時の匂いが同一の感じがするんですよね。
かつて、中国から日本にお茶が伝わった当初の製茶は「釜炒り」という製法でしたが、
その後、ジャパンオリジナルとして「蒸し製」という製法が日本の茶文化の中で育まれました。
では、蒸すのと炒るので、お茶の香味にどのような影響があるのか、森内さんに聞いてみました。
釜炒り製で殺青すると、釜炒りの内壁面温度が400度ぐらいでも、だいたい、5-7分くらい、殺青にかかってしまう。ですが、蒸し製では、鮮度のいい柔らかい芽であれば、100度の水蒸気で20秒内外で酵素の活性を失活させることができる。そういう時間的なね、問題が一番大きんでないかと思います。
このように、短時間でお茶の持つ酸化酵素を失活させることが、摘みたての茶葉の鮮度感を再現する上での鍵になる、そのためには蒸し製が最良の方法となります。
そして、もう一つの日本茶の製茶の特徴は「揉みながら乾かす」ということです。この点についても聞いてみました。
強く揉みながら形を整えながら乾かしていくという方法は、世界中のお茶の中で、日本の蒸し生の緑茶が特異的な製法なのではと思う。いくつか理由はあると思う。一つは、日本の気象状況から得られる葉っぱが、含有水分が結構高い。それを鮮度感を保つためにあまり茶温をあげずに揉むと鮮度感のいいものが出来上がる。そういうことであると、適度な揉み圧をかけながら、火力というよりも揉み圧をかけながら、風を送りながら乾かしていくということが、風と温度とも揉み圧のバランス、なおかつ、よく揉むことで味が浸出しやすい、濃厚なコク味を得ることができる。そして最後に針状に綺麗に伸ばせる。見た目の美しさ。美味しくいただこうと思った時の大切な要素になるのではと思います。
普段私たちが無意識に飲んでいる蒸し製緑茶の製法の中に、日本人の食文化や美意識、
そしてそれに応える技術が隠れていることに気付かされます。
最後に、森内さんのインタビューの中で印象的だったのが、製茶を深く勉強していくと、
緑茶、烏龍茶、紅茶という茶種は違えど、製茶の真髄には同じものを感じるというお話でした。
ちょっとアプローチが違うだけで、根源的なものは一緒で違和感がない。全てのことに共通してくる部分は、萎凋するにしても、狙いをつけて萎凋している。香りの発揚を促す。それまでずっと、最初から最後まで葉っぱを傷めない、目的を達するために余分なことは一切しない、お茶のダメージになることは一切しない。いかに鮮度を保ちながら萎凋させるか、香気の発揚を促すか、あるいは、鮮度を保ちながらダメージを与えて香気の発揚を促すことができるか、そのことに尽きるような感じがします。
そうしてお茶のポテンシャルを引き出す、上手に製茶されたお茶がもつ共通の特徴についてもお話いただきました。
全ての蒸し製のお茶にしても萎凋の進んだ紅茶でも、お茶ってどんな茶種でもやはり飲み終えた後の爽快感は、どの茶種でも、それを期待しているというか、それを味わうことができるという共通項を持っていると思う。最後の最後にその飲み終えた後の爽快感というのが、リフレッシュされた気分というのが、葉っぱの鮮度をいかに維持しながら、目的とする葉っぱに作るか、育て上げていくか、そういうことだと思う。その鮮度感を最も強調したものが、すぐ蒸して、製造に至らしめる日本の緑茶。ずっと最後の最後までいじめ、アプローチして香りの発揚を促すのがウーロンであったり、あるいは、さらに紅茶で、揉捻でグッと香りの発揚を促す。そのアプローチするステージが違うということだけで、あとはみんな一緒、そんな感じがしています。ですから、共通項は、水色が濁っていない。全て、水色がクリア。
これだけの深い思考と試行錯誤を繰り返した実学を経て培われた、
森内さんの「今」のお茶づくりを、ぜひ本編でご覧ください!
日本茶ドキュメンタリー映画製作チーム
高津 真