演劇「きみはいくさに征ったけれど」を上演
vol. 13 2022-02-27 0
竹内浩三がいじめなどに悩む高校生の前に現れる、というストーリーの、伊勢を舞台にした演劇「きみはいくさに征ったけれど」を伊勢市内の若者に見せたい、というのは、今回のクラウドファンディングの目的の1つでした。
それが2021年11月~12月に、伊勢市内の5中学校で実現しました。これは文化庁の支援を受けて、秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場により、コロナウィルス対策として各校の体育館で人数制限をして、各校2~3公演行われたものです。伊勢市内中学生約3000人の内、2/3の子どもたちが鑑賞したことになります。
自分たちの学校にやってきた演劇、間近で見る役者の演技は圧倒的な迫力で子どもたちに迫り、鑑賞後に書かれた感想はどれもそれぞれ率直に彼らの心の大きな感動を綴っていました。
以下はある中学校の2年生が書いた感想をそのまま書き写したものです。
「私は『幽霊』となると、普通は無念の死を遂げて成仏できず、恨みつらみが現世に留まって『恨めしや~』となるマイナスオーラ満載の幽霊を思い浮かべます。しかし劇中の俳優さんが演じる竹内浩三さんは、とてもユーモラスでウィットに富んでいて、幽霊であること、しかも死因が戦争であることなど全く感じさせない明るく魅力的なキャラクターでした。それは、いじめ、苦悩、戦争、死といった重いテーマを扱う劇の中で、一種の清涼剤のように感じられました。私は最初『私は生きたかったのに戦地に送られて死んだ。令和の悩み?甘えるな!』みたいな内容なのかなと思っていました。しかし実際は竹内浩三さんは正論一辺倒で押してこなかったので、逆に個々の死生観に対して考えさせられ、観ごたえがありました。もし彼がSNSなどが全盛の令和の世に生きてみえたら、現代の苦悩に対してどんなことを発信するのかな、と考えました。最後に、私がこの劇を観て思い知った大事なことがあります。それは『間違った思いやり』があることです。先生や家族、友人を心配させまいと思いやって、死にたくなるほどの悩みを隠すことです。そしてそんな繊細で優しいこの劇の主人公、宮斗のような人が周りに普通にいること。それを忘れずに『戦禍』ではない『コロナ禍』の令和の世界を生きていかなければならないと思いました。」