マイノリティ女性が声を上げるということ(弁護士・上瀧浩子)
vol. 8 2018-11-16 0
マイノリティ女性が声をあげるのは、難しい。私は、在日朝鮮人の女性へのヘイトスピーチの損害賠償を求める裁判の代理人をしてきたが、彼女が訴訟を提起したとき不特定多数の人から猛烈な攻撃が始まった。しかし、黙ってしまえば、その事実はなかったことになる。
山本栄子さんは、今、米寿である。彼女が、自分の体験を語るまでには長い年月がかかった。それもマイノリティ女性が置かれた立場の結果である。「女が」、「部落が」、という二重の抑圧の中で自分の声を摘まれてきた。今、彼女の声を聞くことは、長い間「なかったこと」にされてきた事実を知ることだ。そして、私たちが女性差別を許さないと声を上げられるようになるためには、彼女らの長い闘いの積み重ねがある。山本さんと若い世代のマイノリティ女性たちとの対談は、山本さんが88年歳を迎えるまでに解決したこと、解決していないことを整理し直すことになるだろう。それは、私たちが新しい歩みを始めるため必須である。
上瀧浩子(弁護士)