染み込む
vol. 17 2020-08-01 0
印象深いエッセーに触れた時、そこに書かれた景色が、地面に撒かれた水のように自分に染み込んでいく。
相性や好みや、誰が書いたかはあまり関係がなく、そのエッセーに描かれたものが、勝手に自分の記憶に染み込んでいく。
そんな時は大抵無防備な状態で読みはじめていることが多い。パラパラと立ち読みをはじめて、だんだんと体の重心が動いていく。いつの間にか腰を据えて、じっと読んでいる。じっと読んでいることに、後から気がつく。
書いた人の語り口から滲む空気を呼吸して、その人が見つめているものを、エッセーの文章を通じて見る。そんな風に自分に染み込んだエッセーの景色は、自分の記憶よりも輪郭が細やかだったりする。ふとした時に、思い出したりもする。
多くの方が今回の「そらあるき」にエッセーを寄せてくださる。今、読まれるために寄せられるエッセーに描かれるものはどんな景色だろうか。
景色が染み込むようなエッセーを書きたい、とは心細すぎて自分は言えないけれど「そらあるき」という船に編集部として乗り込んでいるので、やるしかないのだと自分に声を掛けている。
そらあるき編集部 新潟支部
BarBookBox 豊島淳子