「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」本屋大賞 受賞!
vol. 6 2022-11-12 0
昨日発表された、全国の書店員が選ぶ「2022年 Yahoo!ニュース 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を、この映画の原案となる「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」(川内有緒 著)が受賞しました!
「めでたいっ」と贈賞式で白鳥さんがおっしゃられていた通り、本当に”めでたいっ”です。同じ日に、大賞発表前で最初の目標である230万円を達成し、その後、本屋大賞発表と同時にストレッチゴール(次の目標金額)を発表できたのは、11月11日の持つパワーだったのでしょう。
贈賞式では、有緒さんが受賞スピーチを行い、白鳥さんとマイティさんのお二人を含めてのトークセッションがありました。有緒さんのスピーチでは、時々震える声から伝わる緊張感や、紡がれる書籍への想いが溢れていました。ドラマチックでないノンフィクションに描かれた「ありのままの日常」。そして、それが大賞を受賞する意味。この本から透けて見える問いである、社会に蔓延する”生きづらさを努力で乗り越えるべき”などの「らしさ・するべき・であるべき」という価値観。なぜか一つに統一され、決めつける・決めつけられた価値観の正体。たとえ、わかりあえないとしても、一つに決めつけた価値観で括ることなく、複雑に入り乱れた価値観の一つひとつにこそ価値がある。有緒さんはこの言葉で表しました。
「わかりあえないけど、わかりたい。わかりたいけど、わかりあえない。」
あなたになれない私が、私ではない他人の考えや想いを100%理解できないとわかっていたとしても、分かろうとするその切なさを抱えながらも、なんとか一緒に生きていく。その道を探りたいと語りました。
この本が、今の時代に受賞する意味を、深く考えてみたくなりました。
贈賞式のアーカイブはコチラ(有緒さんのスピーチを是非ご覧ください)
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[コラム]
私と父は、親子で哲学好きです。父の口癖で、「空の色は、みんな同じ色で見えている訳ではない」というのがあります。家庭内で突然始まる哲学ばなしは、今では時たまの日常茶飯事ですが、ある時、父が言いました。「他人から見た色を私が見ることはできない。なのに、人の苦しみに、簡単に"分かる分かる"って言う。分かるはずがないのに、わかってるワケがないのに、その共感ってオカシイ。他人の感情を100%理解することは絶対にできない。」それを聞いたとき、「確かに」と思いながらも、モヤモヤがありました。コレは事実で、家族でも友達でもどんな間柄であったとしても、変わらないことです。でも、モヤモヤしてました。
お風呂で悩みながら、数日後、父に語りました。「確かに他人から見た色は、努力しても絶対に分からない。でも、どんなに他人を100%理解できないとしても、理解しようと努力するその事は素晴らしいことなのではないのか。」父は黙りこくりました。(やったぜ)
哲学本を読んで、様々な小難しいことを知っていく自分が好きな、その程度の哲学好き親子ですが、今回の贈賞式で有緒さんが語ったあの言葉は、私の考えとも共通項があり、とても嬉しかったです。
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(文: SL)