カシャ(火車)について解説します!
vol. 15 2022-06-20 0
皆さま、いつも応援ありがとうございます!
本日はこのプロジェクトで登場する「妖怪カシャ」について、解説したいと思います!
佐脇崇之『百怪図鑑』
皆さまの住んでいる地域にも、葬儀の際、遺体の上に刀や包丁などを置く風習がありますか?
この風習は、カシャから身を守るためだといわれています(『遠野物語小辞典』)。
亡骸を奪って地獄へ連れ去るという「妖怪カシャ」。その伝承は全国にあります。
例えば、「堂内で葬儀をしていた時、突然黒雲が入ってきた。そして黒雲から大きな手が出てきて和尚を掴んだ・・・」(『裏見寒話』巻2)とか、またある時は「黒雲が死人をつかんで空高く上がっていくところを、雲東庵の長老がその死人の足に取り付き、いっしょに空へと舞い上がった。しかし死人共々地に落ちて無事だった・・・(『漢和希夷』のちに鈴木牧之『北越雪譜』に)など。
『画図百鬼夜行』
もとは罪人を苦しめるために、地獄で鬼が引いている「火車」が語源ですが、近世になると「妖怪」と化し、人々に怖れられるようになります。もともと雷との関わりがとても深く、葬儀の際の雷は堕地獄の象徴とされていて、雷が鳴ると、「あっ、カシャが出たに違いない」と、目には見えない化け物の存在を信じたのが始まりのようです(『火車の誕生』勝田至)。
カシャが住んでいるのは地獄だけでなく、人々が生活するすぐ近くに住んでいたとされる伝承もあります。たとえば『遠野物語拾遺』113には、カシャ(キャシャ)が住んでいた場所として、
①笠通山(かさかようやま)・・・怪しい女にも化けた
②遠野市内ダンノハナの途中のゴロ(洞穴)・・・女好きには女に化けてみせ、酒好きには酒に化けてみせ、力の強い者には大力士に化けて出てくると伝えられている。
というのがそれです。
カシャは女性にも、そして大力士にも化けられる変幻自在の妖怪だったのかもしれません!
ところで、カシャに亡骸を奪われるのは導師(葬儀を執り行う僧侶)の恥とされていたようで、実際に棺ごと奪われてしまった導師が、その土地に住んでいられなくなり、他国に逃げてしまったという伝承もあります(遠野古事記南部叢書所収本)。
遺体に刃物を置いて、お世話になった方が「無事に極楽へ救われますように」と願う、つまり人を思う優しさをいつまでも大切にしていきたいものですね。