「福富町で研究した茅葺き古民家の魅力」
vol. 6 2025-02-28 0
本日のテーマ:「福富町で研究した茅葺き古民家の魅力」
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◆ 研究の舞台:福富町の茅葺き古民家
大学時代、私は広島県東広島市福富町で、茅葺き古民家の研究を行っていました。
この地域には、かつて茅葺きだった住宅が多く、現在は銅板葺きへとアップデートされたものが多く見られます。
特に「入母屋造(いりもやづくり)」の屋根形状を持つ古民家が多く、私は下竹・上竹地区にある約150件の住宅を目視調査し、そのうち80件ほどがこの形状の住宅であることを確認しました。
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◆ 伝統構法がもたらす強さとしなやかさ
この研究では、地域の方々から直接お話を伺い、実際に住宅の構造を見せていただく機会を得ました。
そこで気づいたのは、現代の耐震技術とは全く異なる、古民家独自の「しなやかな強さ」でした。
現代の住宅は、耐震性を高めるために筋交いを入れて「固くする」ことが主流ですが、
古民家は「免震」の考え方で設計されており、地震の揺れを上手に逃がす構造になっています。
特に特徴的なのは、「礎石(そせき)」と呼ばれる石の上に柱を “置く” という構造。
基礎と柱を直接固定せずに、建物全体が柔軟に動くことで、地震のエネルギーを受け流す仕組みになっていました。
これにより、何百年も倒壊せずに残る住宅が多く見られました。
また、「家計作り」と呼ばれる補強技術にも驚かされました。
現代の住宅では、壁に筋交いを入れることで耐震性を高めますが、古民家では 天井部分に「×印」の補強を入れることで、建物がゆっくりと歪みながら崩れる設計になっていました。
これは、万が一の火災時に家が一瞬で倒壊するのを防ぎ、避難時間を確保するための工夫でした。
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◆ 「住み続ける」ための知恵と工夫
古民家の構造は、単に強度を求めるのではなく、環境に適応しながら 「長く住み続けるための知恵」が詰まっています。
現代の家は「機密性・断熱性」が重視されますが、古民家は「通気性」を大切にし、湿気を逃がすことで 長寿命化を実現していました。
例えば、囲炉裏(いろり)の存在もその一つです。
囲炉裏の煙には、茅葺き屋根に住みつく虫を除去する効果があり、煙が天井裏に行き渡ることで、自然な防虫機能を果たしていました。
また、通気が良すぎて「寒い」と言われる古民家ですが、これは 湿気対策のための合理的な設計 でもあります。
密閉性を高めることで結露が発生し、木材の腐食やシロアリ被害につながるのを防ぐため、風が抜ける構造が重要視されていたのです。
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◆ 古民家の魅力と、現代への活かし方
こうした伝統技術を知ることで、古民家は単なる「古い家」ではなく、環境と調和しながら生き続ける家だと実感しました。
今の技術と組み合わせれば、現代の暮らしにも適した形で古民家を再生することができる。
古民家が持つ「素材の力」や「合理的な知恵」を活かしながら、新しい住まいのあり方を模索することが、私たちにできることではないかと思います。
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現在の進捗
・支援金額:571,000円(57%達成)
・支援者数:48人
・終了まであと26日
このクラウドファンディングが、
「田舎との関わり方の選択肢」を広げるきっかけになれば嬉しいです。
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古民家は、ただ「古い」だけではなく、そこに生きる知恵や工夫が詰まった宝物。
さとまる不動産を通じて、そんな価値を未来へつなげていけたらと思っています。