辛淑玉さん(デュッセルドルフ大学客員研究員)から応援メッセージをいただきました!
vol. 5 2018-06-18 0
歴史は強い男たちの妄想の産物だった。そこには、生活者の視点も、奪われし者の声も、殺されし者の慟哭も消し去られている。
私の祖母は、死ぬ最後の最後の瞬間まで、自分の名前をチラシの裏の白紙の上に書いていた。非識字で、植民地化の朝鮮では、異母兄弟を背中に背負い奴隷のように働き、「千代子」という日本名をつけられ、日本の製紙工場に送られ、何度かの自殺未遂を経て、関東大震災に遭遇し、晩年は夜中に、鍋釜を手にとって夢遊病のように部屋を回りだした。そんな祖母を息子(叔父)たちは、日本社会から受ける差別の感情のゴミ箱として殴り続けた。祖母は抵抗しなかった。祖母の葬式のとき、あれほどひどいことをした叔父たちが「オモニ」「オモニ」泣き叫んでいた。私は、叔父たちが許せなかった。祖母の人生は想像するしかなかった。もっと聞いておきたかった。もっと知っておきたかった。もっと、もっとといいながら歳を重ねた。
ハルモニの手のシワの一つ一つに物語がある。ハルモニの語る日本語の一つ一つに歴史がある。その歴史の上に、私達がいる。彼女たちの強さを継承したい。
彼女たちの美しさを継承したい。「正義」はそこにあると思う。この事業に参加しませんか。篤志家のカネではなく、私たち一人ひとりの思いが積上げられて、ハルモニの言葉が歴史の中央に座れるようにしたいのです。
力を貸してください。
辛淑玉(デュッセルドルフ大学 現代日本研究所 客員研究員)