深沢潮さん(作家)から応援メッセージをいただきました!
vol. 4 2018-06-17 0
(写真提供:朝日新聞出版)
読み書きの技術を獲得するということは、世界が広がるということだ。熱心に文字を覚えるハルモニたちのことを想うと、母方の祖母がお年玉のポチ袋に孫の名前を記したカタカナの文字が鮮明に頭に蘇る。鎮海出身の祖母は、女は学校に行かなくていいという家の方針に従い、教育を受けられなかった。しかし、どうしても読み書きができるようになりたくて、兄の教科書でハングルと漢字を覚えた。戦前に来日後、受洗し、教会に熱心に通い、聖書から日本語を覚えた。当時の聖書は漢字とカタカナだったので、祖母は亡くなるまでカタカナしか書けなかった。けれども、祖母からは多くの宝物をもらった。寝物語に聞いた聖人の話や聖書の逸話は私の血肉となって、いまの小説家という職業につながっている。
ハルモニたちが自ら紡ぐ物語を、語りを記した本が世の中に出ていけるように、ハルモニたちの世界が広がるように、ぜひ多くの方々に協力いただきたく、お願いいたします!
深沢潮さん(作家)