サークルで音響をはじめたばかりの頃の自分のための、劇場音響入門(伊坂)
vol. 48 2020-04-26 0
こんにちは、花まる学習会王子小劇場スタッフの伊坂です。
えーと、今度は音響をテーマにという指定がありましたので、今日は劇場職員の視点から基本的なところをご案内できればと思います。大学サークルで音響を始めてまだ学内でしか公演をやったことがない頃の自分を想定して書いてみますかね。
というわけで、ターゲットが狭めのコーナーになってしまいそうですが暫しお付き合いください。
【ミキサー】
さて、何から書きはじめればいいものやら……という感じですけれども、まずは劇場にある機材をご紹介しましょうか。
主なところとして、ミキサーはMACKIEのProFX16v2が1台、スピーカーはTOAのSR-F05とSW-38S-ULが各2台あります。このスピーカーがまずひとつ王子の特徴かなと思います。低音域用のサブウーハーと中高音域用のメインスピーカーに分かれてるんですね。
【劇場SP】
たまに誤解されているのですが、ウーハーとメインは組み合わせて1セットで使うものです。別々に鳴らすのではなく、セットで左右に置いて2ch分ということですね。
特にサブウーハーが大きくて場所を取るので、その分低音は比較的よく鳴るんですが、仕込みの位置は検討が必要です。
大変残念ながらこのスピーカーたち、吊るための機構はありません。その代わり(?)、メインスピーカーはスピーカースタンドに対応しています(スタンドも備品にあります)。あとは、キャットウォークに設置することもありますね。
【スタンド】
いずれにしても使い方のポイントとしては、スピーカー面をしっかり客席に向けること、収納用の台車から下ろして設置すること、でしょうか。
それからホール内には他にシーリングスピーカーがありますが、センターを割っておらず「ザ・設備」という感じなので舞台演出にはあまり向きません。とはいえ、あると知っておいて損はないでしょう。(僕は使ったことあります。)
【シーリング】
あとよく出る備品としてはワイヤレスマイク、これはハンドヘルドが2本、タイピン型が1本あります。
【マイク】
ワイヤレスの受信機は劇場スピーカーのパワーアンプ類と同様、音調室のラックに常設されています。
【ラック】
他にも色々とありますので、劇場サイトの機材リストをご覧ください。劇場図面も同じページの中にあります。
http://www.en-geki.com/service.html
お次は逆に劇場にないもの、持ってきた方がいいもの、についても書いておきましょう。
○PCなどの再生機器まわり
CDプレイヤーは備品にもありますが、今はPCが使いやすく主流かと思います。ミキサーより手前の部分についてはケーブルも含めてご用意をお願いします。
そういえば僕が初めて王子に入ったのは確か19歳の頃でしたが、MDデッキを積み上げて使っていました。いやはや、時代は変わりましたねぇ。
○ヘッドホン
音源の確認なんかで必要になることがあるかと思います。遮音性の高い密閉型がいいでしょう。劇場備品としてはありませんので、ご持参ください。こんなん何本あってもいいですからね。
○ライト
クリップライトは劇場にも無いわけではないのですが、作業で使う手元灯りなどは使いやすいものを持ってきていただくのが良いかと思います。
今パッと思いつく無いと困りそうなものはこんなところでしょうか。
劇場機材を使う分には、スピーカーケーブルなどはおそらく十分足りる長さと数があります。一応、下見などで確認してみてください。
そうだ、下見ですね。花まる学習会王子小劇場では、初めて使うスタッフさんには必ず事前に下見をしていただくようお願いしています。
劇場入りしてからは限られたスケジュールの中で進めていく必要がありますから、会場について把握して、いろいろ想定をしておくことは大切です。僕自身も他の劇場に音響で入る場合は下見に行って、10分足らずで終わることも多々ありますけど、それが無駄だったことはありません。
ウチは客席の組み方も自由な劇場ですので、ある程度使い方が定まってきた時期に来ていただくと良いかと思います。
せっかくなのでここまでで触れている以外の要チェックポイントを挙げておきましょう。
■オペブース
音響電源や機材ラックがある音調室はガラス張りになっていてモニタースピーカーもあるので、いわゆる正面使いの場合はここでオペを行うことも可能ですが、ほとんどの場合はホール内(ギャラリーや客席後部など)に長机を置いて仮設しています。回線や電源を必要に応じて引き回すことになるので、そのことも想定しながら下見されることをオススメします。
【音調室】
■楽屋モニター
楽屋にホール内の映像・音声のモニターがあります。たとえば組み方によっては出演者の待機場所が楽屋以外になって別途モニターが欲しいということもありえます。専用の備品はなく持ち込みが必要になりますが、分岐させられるようになっているので、確認しておくと良いかと思います。【楽屋モニター】
そういえば、先日オンライン下見というのをやりました。下見の代わりに、とまではいきませんが雰囲気はいくらか感じていただけるのではないでしょうか。こちらの記事からどうぞ。
https://motion-gallery.net/projects/sakichi2020/updates/28076
で、仕込む内容が決まったら図面を作って、劇場にも提出をお願いします。
技術監督・黒太さんの照明図面がスゴイことになっていますが(過去コラム参照)、別に手書きでも大丈夫です。たとえばこんな感じで。
【図面例】
いや、さすがにもう一回くらい清書しても良かったかなと反省してますが、必要なこと、たとえば「機材は何を使うのか」「どこに何を配置するのか」といったことがちゃんとわかれば劇場としては問題ないです。
ふー。ひとまず、こんなところでしょうか。
いただいた質問にピンポイントでお答えすることはよくありますが、ざっくり網羅しようとするのはやはり難しいですね。
劇場のことでしたら、いつでもお尋ねいただければお答えさせていただきます。
「ここテープ貼ってええのかな?」とか、迷ったら何でもまず聞いてくださいね。
あとは気が早いですけどバラシが終わったら職員まで「終わったよ」って教えてください。
あんまり細かい話までは踏み込めませんでしたが、少しでも誰かの参考になれば幸いです。(そして、あくまでも参考程度に、です。)
最後に、このクラウドファンディングも残りわずかの期間となりましたが、たくさんの方にご支援をいただけて、心強く感じております。本当にありがとうございます。
劇場が賑わいを取り戻す日が一日も早く訪れるよう、これからも応援をよろしくお願いいたします。