技術監督・黒太剛亮『王子小劇場の思い出⑤〜劇団ヒロシ軍襲来編〜』照明図面つき
vol. 34 2020-04-12 0
いつもお世話になっております。
花まる学習会王子小劇場、技術監督の黒太剛亮です。
うちの劇場職員は僕と伊坂くん以外は作家と演出家の集まりなんですけど、他の職員のコラム読んでると面白くてすごいなぁと思います。僕のこれ、大丈夫かなぁ…。
そういえば伊坂くんって自分の劇団で何してる人なのかあんまりよく知らないです。音響さんで、計算がすごく早くて、ハンバーガーが大好きです。彼が劇場に来るって知った時に(うちにもう一人スタッフ出来る人くる!喜び!)と思って伊坂くん専用デスクと棚を作ってしまったんですよねぇ。これ今考えてもちょっと気持ち悪いなって思います。
懸念はありますが、それでは本日も自分のペースではじめていきます。(いつもどおりですが、図面が見づらかったらこちらからpdfで見てみてください。クラウドファウンディングが終わったら多分消します。)
・2017年5月 やみ・あがりシアター『りんぷん手帖』
たいへん残念なんですが、この図面はデータが紛失しております…。どこかに残ってないかなぁ…。
・2017年5月 劇団ヒロシ軍『愛を喰らえっ!!!(東京編)』
【画像/201705 ヒロシ軍図面 Meets TOKIO】
ヒロシさん、さっちゃん、もう3年も前の話なんですねぇ。
この企画は劇団さんだけ来てもらって、スタッフは全て劇場職員、というものでした。台本とか映像とかがホント直前まで来なくて、オーダーも特に無くて、ギリギリで焦って書いた図面です。地明かりがダッフィーなこと以外はとてもオーソドックスというか、特にひねりの無い図面ですけど、これがバチッとハマったんですよねぇ。チキン揚げてるヒロシさん、かっこよかったなぁ。
Backの色の並べ方って、みんなどうやって考えてるんですかね。シーンで使うのに足せるように使い勝手の良い並びにしたりもしますけど、単純に見た目かっこいいのも重要ですよね。あおってる時の混ざり方とか、全灯した時の派手さとか。こうしなきゃいけないっていう決まりは僕も特に作ってないんですけど、2色以上混ぜる時に混ぜやすい色味が片方に寄らないようにしてますかね。ビームも偏っちゃうので。この時はB/Ye/R/Pi/Aなんですけど、これ黄色とピンクが入れ替わっただけでとたんに使いづらいって(僕は)思うんですよね。現場次第で色んな違いがあるので一概には言えませんけど。ヒロシ軍の時はオムニバスだしこれしか飾りは無かったから使い回しまくってたし、動きもどうなるか分からなかったので広範囲フォローできることが必要でした。色の組み合わせを考えるとこの時はこのパターンがベストだったんだと思います。色の話って…言葉で説明するの難しいですね苦笑
ヒロシさんとさっちゃんは僕と奥さんがそれぞれ年が近かったこともあってとても仲良くさせてもらっています。公演期間中にうちでご飯を食べたり、奥さんと2人で長崎旅行に行ったときに現地で一緒に遊んだりしました。距離は遠いけどまた会いたいなぁ。
・2017年6月 ロデオ★座★ヘヴン『大帝の葬送』
【画像/201706 ロデオ・座・ヘブン「大帝の葬送」】
台数は多いんですけど、大半が地明かりです。というか、長い一場と、短い二場、それとPJのシーンしかなかったので長いシーンに耐えられる明かりを作ることが一番の課題でした。いわゆる会議物だったんですが、「窓のない/電球色の/昭和の雰囲気」の会議室で、どうしてもやりたかったのが「壁際は暗い」ことでした。T字の舞台でお客さんは3面だったんですが、舞台の真ん中に電灯があって、お客さんに近い立ち位置の役者は壁際に立っているから顔は見えず、遠い位置の役者は電灯の明かりに当たって顔が見える、という設定でした。図面を描く作業の大半は角度計算でした。すごい時間掛かりましたね…。
Par36が電灯で、Par64がカーペットの跳ね返りの色、地明かりはあくまでフォローです。地明かりの光量のバランスを取るのと、サイドの客席にはブッチとして使えるように、正面の客席から見るとバックになる方向ですがCLがあります。ちょっとどこかのゲージを変えると印象が変わってしまうので現場でも一場の明かりをずーっといじり続けてましたね。
この時初めて遭遇したトラブルが、ユニットの温度上昇による停止でした。そりゃこんだけの台数がずーっと点いてればそうなるよなぁ、という感じなんですが。扇風機を買って冷やし続けることで解決しました。(DCモーターのちょっと高いやつでした)
LitePuterのユニットは本体内部温度が75℃を超えると70℃に下がるまですべての出力が停止します。
・2017年7月 中高生演劇サマースクール2017 集中コース発表公演『なつめろ』
【画像/201707 SummerSchool2017_LightingSheet】
サマースクールも2年目です。毎年徹夜で一気に仕込むんですけど、夜中に池亀さんとか職員たちが「おい、マジか…?」みたいな顔するのが好きでした。
ミラーボールの色が変わりたいなぁと思って単光源のDotzParを仕込んでみたものの、思ったよりきれいには出ませんでした(ボツボツしたLEDをミラーボールに当てるのは嫌いです)。結局のところ単光源ではないですもんね。楽をしようとするのは良くない!
客席が2方向以上ある時に見え方が完全に違う明かりを出すのはあんまり好みではないんですけど、この時はそれにチャレンジしました。花火のシーンで片側だけに花火が上がるようにして、「花火の明かりが顔に当たって見える側」と「花火の明かりでシルエットに見える側」を作りました。どっちもいいエモさでしたね。
舞台照明家という仕事は職業としては好きですが、演劇が好き!照明が大好き!という感じではないなぁと自分では思っていました。でも新しい図面が書きたい、明かりが作りたいなぁと今は感じています。僕らはどうしても劇場でしか明かりが出せないから、感覚が鈍っていく前に早く戻りたいなぁ…。
王子小劇場で才能を発揮するはずだったスタッフたちがまた戻ってこれるように、どうかクラウドファンディングにご協力をお願いします。
花まる学習会王子小劇場 技術監督 黒太剛亮