モラルの「王子新年会の思い出〜阿鼻叫喚・幻のわんわん王国編〜」
vol. 33 2020-04-11 0
モラルです。
現在、花まる学習会王子小劇場の最年長職員にして、最古参職員です。気さくな雰囲気と笑顔で後輩職員から慕われていると自分では思っていますが、真偽のほどは定かではありません。
僕がこの劇場に入ったのは、かれこれ7年前の、2013年になります。劇場の新職員を公募していることをTwitterで知って応募し、採用していただきました。劇場で働くって、やっぱり憧れだったんですよね。
当時の芸術監督は初代の玉山悟さんでしたが、僕が入った時点で、僕と同い年の北川大輔さんが二代目の芸術監督に就任することが確定しており、北川さんを中心とする当時の若手職員チームは、この劇場の今までの良さを踏襲しつつも新たな風を吹かせるべく、日々赤裸々な本音を語り合いながら、交流を深めていったのでした。
誰かにいいことがあればすぐさま飲み会を開き、誰かに辛いことがあれば夜の海にドライブに行き・・・なんというか本当に、遅れてきた青春を過ごさせてもらったなあと思っています。僕が何度もダイエットに挑戦してはあっさり散っていく姿も、誰一人「またかよ!」とは突っ込まず、ニコニコと見守ってくれました。
そして翌年の、2014年。僕は毎年の恒例行事である、劇場の新年会のディレクターに就任しました。王子小劇場の新年会は、毎年かなり多くの人が参加してくれる、結構な規模のイベントで、毎年劇場スタッフの誰かがディレクターとして、会全体を取り仕切る習わしだったのです。
世代が代わった「新しい王子小劇場」を、新年会という場でもちゃんとアピールしなければならない・・・ディレクターに就任した僕は、そんな責任感を胸に、「王子わんわん王国」という、とにかく集められるだけの犬を集めて劇場に解き放つ、というアイデアをミーティングで提案しました。しかし―。
「まあ、さすがにちょっと・・・」「犬は、ね・・・」「熱意は嬉しいんだけど・・・」
満場一致で採用されるかと思われたアイデアは、まさかの却下!こうして、「王子わんわん王国」は幻のイベントとなったのでした。
特に意味はないのですが、最近iPadを手に入れて絵を描きたいお年頃のため、「王子わんわん王国」のイメージを描いてみました。
しかし今にして思えば、こんな爽やかな光景になるはずもなく、阿鼻叫喚の地獄絵図になることは必至で、あの時劇場の仲間たちが止めてくれて本当によかったなと思っています。
その後、アイデアを練り直すことになった僕は、やれ餅つきがしたいだ、いい感じになった男女が二人でいちゃつける場所を作りたいだ、劇場職員の手間が増えそうなアイデアばかりをミーティングで提案しました。しかし、初手の「王子わんわん王国」でだいぶハードルがおかしなことになっていたのか、「もう、好きなようにやってくれ!」とのGOサイン。新年会当日は、劇場の仲間たちや助っ人の皆様に多大なるご協力をいただいて、トランシーバーで連絡を取り合ったりしつつ、様々な企画を何とかやり遂げたのでした。
ロビーの一角に「王子博物館」と銘打って設置した、謎の安っぽい二足歩行のロボットに関しては余計だったんじゃないか、と後日のミーティングで議論になったことも、忘れられない思い出です。
そして翌年の2015年も、僕は継続して新年会のディレクターに就任。「新たな出会い」をテーマに、ロビーに巨大な模造紙を貼って参加者同士が交流する掲示板にしたり、「あの人に話しかけたいけど話しかけられない・・・」という時は、劇場職員が扮する「エンジェルちゃん」というキャラクターが仲介するようにしたりしました。さらには、ロビーの一角に、まさかの「王子博物館2」が設置され、「あなたの指紋を採取してみよう」という、またしても余計なイベントまで生まれたのでした。
今にして思えば、もっとシンプルな飲み会でもよかったような気もしますし、そうすれば皆にあんな負担をかけることもなかっただろうにと考えたりもします。ですが、「迷った時は険しい道を行く!」という王子小劇場の謎のポリシー(僕の勝手な解釈です)が、僕に沢山の経験をさせてくれて、今でも心の糧になっていることは紛れもない事実です。
そして、やはり劇場という場所は、劇団さんが使ってくれて初めて劇場になるのだなと、閉館中の今、改めてひしひしと感じています。いつだって、才能あふれる気鋭のクリエイターの皆さんが、この場所をただの空間でなく、劇場にしてくれてきたのです。
今は外に出ることもままならない毎日ですが、本来であれば行われていた佐藤佐吉演劇祭2020を、必ずや改めて開催したいと思っております。どうか、クラウドファンデングにご協力いただけますと幸いです。