技術監督・黒太剛亮『王子小劇場の思い出④〜手作り機材とスラング編〜』照明図面つき
vol. 27 2020-04-05 0
いつもお世話になっております。
花まる学習会王子小劇場、技術監督の黒太剛亮です。
閉館が延長してしまいました…。悲しいです。
ずっと点灯していない劇場灯体達もかわいそうです。こんなに長い期間床に置いておかれているのは初めてなんじゃないでしょうか。せめて開館時に埃まみれ、とならないようメンテナンスしておきます。
それでは、本日もはじめていきます。(いつもどおりですが、図面が見づらかったらこちらからpdfで見てみてください。クラウドファウンディングが終わったら多分消します。)
・2016年12月 オトナの事情≒コドモの二乗『楽屋-流れ去るものはやがてなつかしき-』
【画像/201612 オトナの事情≒コドモの二乗「楽屋-流れ去るものはやがてなつかしき-」】
この公演ほんと面白かったです。あそこまで達者な役者さん揃えて公演出来るのも珍しかったんじゃないでしょうか。塚越さんすごい。
この明かりで気に入ってたのは、男性キャスト版のP19鏡Back、でした(名称が青文字が男性版、赤文字が女性版、黒文字が共通)。鏡に明かりを当ててその反射で顔を取る、という仕込みだったんですが、ほぼ真後ろから狙ったのですごくシビアな立ち位置を要求してしまいました(自分が完全に鏡と灯体の間に入ってしまうと明かりが出ないので)。そしてすごく眩しかったそうです。塚越さんその節は本当にすみません。あと、(若干記憶があやふやなので多少言い方は違うかもしれませんが)岡田あがささんがサスに入って「すごく演劇だって思ってしまった」というようなことを言ってたのが嬉しかったなぁ…。すごく演劇みたいだなぁと思って、演劇みたいな明かりにしたかったので。
一番驚いたのはあがささんが同い年だったことですかね。
それから、うちの劇場は基本的に自由にレイアウトを決めてもらえることが出来るので、常設の客電がありません。よく使うのはTBF-Dっていう機材なんですが、(個人的にですが)あんまりかっこいい客電にならないなぁと思ってたので、この時初めてフレネルを客電にしてみました。なんだか大きな劇場みたいな、いい客電でした。機材数に余裕がないと出来ないことですけど、またやりたいです。
・2017年1月 深夜ガタンゴトン『ぬるい体はかたくなる』
【画像/201701 深夜ガタンゴトン「ぬるい体はかたくなる」吊】
【画像/201701 ぬるい体のチャンネル表】(仕込み図原本紛失の為PDFが作成途中データなので添付)
この現場は、黒太さんが他の現場に付きっ切りだったので、黒猿の小見波が仕込み・場当たり・オペを担当しました。舞台上がバトンから舞台のパネルまで幕で覆われていて、オペをしていても灯体が全く見えなかったから、本番中ちゃんと点灯しているか不安でしたね。舞台が霊安室で、セットに遺体安置用の冷蔵庫がありました。その中に蛍光灯を仕込んだのですが、チカチカっとフェードアウトで暗転していくのが、役者さんの顔がホラーで良かったです。個人的には、ラスト、部屋の中に朝日がめいっぱい入ってくるシーンの色がとても気に入っていました。(色を決めたのも私。)舞台が真っ白だったので、夕方から夜のシーンにフェードチェンジするときに、変化の途中でどうしてもピンクっぽくなってしまったのが、どうしたらよかったのかなぁと考えていましたね。(色を決めた人として。)
図面上の名称に「ダッフィー」とありますが、このころから黒猿で流行っている地明かりの取り方です。なぜダッフィーと呼んでいるかというと、黒猿はディズニーが大好きなのですが、東京ディズニーシーのアメリカンウォーターフロントにある、ケープコッド・クックオフで上演されている「マイ・フレンド・ダッフィー」というショーで仕込んである地明かりの形なんですね。そこから真似をしているので「ダッフィー」と呼んでいます。黒猿のスラングのひとつです。
…技術監督のコラムなのに、黒猿の人を呼び出してしまいました。黒猿の小見波さん(ちなみに当時照明を始めて1年経ったくらいでした)、ありがとうございました!いや、明かりはめちゃくちゃかっこよかったんです。が、ホントに現場にはほとんど顔出せなかったんですよね。ちょっとだけ補足します。
・「バトンからパネルまでの幕」というのは要するに文字幕のことですね。普通は上空にあるものですし、小劇場ではめったに見ないものですが、この時はそれを舞台美術と接続できる高さまで下げてもらったのでした。(いつもお世話になっております、小川陽子大先生!)自分で自分の首を絞めるような提案でしたが、とてもいい結果でした。灯体を見せるフェチと見せないフェチってあると思うんですよねぇ。
・「色を決める」、僕は明かりの方向とか角度を決めるのは大得意なんですが、色を考えるのは苦手なので、色を決めるのは結構メンバーに頼っていることが多いです。いい感じの青、とか可愛い感じで適当に、とか訳の分からないだろうプランナーのオーダーにいつも応えてもらっています。他の照明チームとはここが一番違うところかもしれないです。
・「ダッフィー」、これ以外のスラングにはドナルド、あとミッキーとかシェリーメイとかがあります。ペロペロ(前回参照)はディズニー関係ありませんが、つくにさんもディズニーは大好きです。
・2017年3月 冗談だからね。『青春の延長線』
【画像/201703 冗談だからね「青春の延長戦」吊】
【画像/201703 冗談だからね「青春の延長戦」ギャラ・置き】
冗談だからね。の安保くんは彼が高校生の頃からの知り合いなので、彼がうちでやってくれるのは嬉しくて仕方がなかったです。役者もスタッフも若い人たちばっかりで、未来!って感じでした。
ステージ仕込みのKEYTALK、元ネタはバンド名です。
↑桜花爛漫、って曲のMVで使われている照明がかっこよかったので、作ってみよう!と思って、これとは別の現場でしたが、作ったものです。垂木にレセプタクルを打ち付けて配線して電球を取り付けただけのものですが、これがまぁ派手で、エンタメとかにはとっても便利でよく使ってます。
このMVで実際に仕込んでます。
手作り機材って最近作ってないなぁ…。せっかく時間あるし、何か有り物で作って遊ぼうかしら。面白そうなアイディアがあったら教えてください!
最近SNSで照明さんが仕込み図や写真を上げているのを見かけます。書き方が全然違って面白いですよね。王子に勤めて良かったなぁと思っていることの1つに、いろんな照明家さんの図面と明かりが見れる、ってことはあると思います。情報量が多くても分かりやすい図面が書ける人はすごいなぁと思います。
やっと2017年。なかなか遅々として進みませんが、2020年までもう少しお付き合いください。
花まる学習会王子小劇場 技術監督 黒太剛亮