「僕と池亀さん」(モラル)
vol. 17 2020-03-26 0
こんばんは、モラルです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、花まる学習会王子小劇場のスタッフは、自身もクリエイターとして活動する脚本家・演出家が大半です。それゆえ否が応でも、別業種のバイトをするより、互いの因果というものが深くなってしまいます。
僕がこの劇場にスタッフとして入ったのが2013年で、翌年の2014年に、後に芸術監督となる池亀さんが入ってきました。
池亀さんとは、この時既に面識はあって、それどころか、年齢も劇団のキャリアもほぼ同じクリエイターとして、バリバリに意識していました。お互い、会えば笑顔で挨拶は交わすものの、心の中で火花を散らしていたことは否定できません(僕の方はね)。
そんな池亀さんと、まさか同じ劇場で働くことになるなんて・・・。
池亀さんは池亀さんで、一応劇場スタッフの先輩として僕を立てようとしてくれるし、僕は僕で、池亀さんの方が色々活躍してるし~みたいな謎の遠慮があって、お互いの距離は、なかなか縮んできませんでした。
ですが、そんな僕達には、ひとつの突破口がありました。
それは二人とも、漫画「ワンピース」が好きだということ。
ぎこちないながらも、「・・・ワンピースの最新刊、読みました?」「あっ、はい、読みました」というやり取りを、徐々に交わしていくようになった僕達。
そしてある日、僕は、当時まだオープンしたばかりの「東京ワンピースタワー」に、思い切って池亀さんを誘ってみました。
「・・・二人で、ですか?」と戸惑う池亀さんに、「二人で、です」と僕は答えました。
そして池亀さんは、少しはにかみながら、「行きましょうか」と言ったのでした。
今思えばあの時の僕は、初デートの時より緊張していたかもしれません。
そして、迎えた当日―。
会場に散りばめられた、ワンピースにまつわるあんなものやこんなものが、僕達を笑顔にしていきます。
財宝探しのイベントに参加したら、男二人ではしゃぐ僕達を気遣ってか、海賊風の衣装を着た係のお姉さんが、やたらと話しかけてきてくれました。
最後は、二人仲良くポーズをとって、写真をパシャリ。
この日から僕達は、ワンピース以外のことも、少しずつ話すようになっていきました。
池亀さんは、基本的に穏やかで物静かな人なので、僕はずっと「実は色々クールに計算してるんだろうなあ」と勝手に思っていたのですが、本当はアツくて、すごい不器用な人なんだということも分かりました。
この劇場で出会わなければ、きっと池亀さんとは、笑顔で挨拶するだけの関係で終わっていたと思います。同時に、そういうクリエイター同士の、ちょっと面倒臭い時期を経たうえでの今だからこそ、不思議な絆が生まれているのかなとも思います。
全てはこの劇場と、ここに出入りしてくださる皆様、そして海賊風のお姉さんのお陰ですね。
なーんてことを、まるで昨日のことのように思い出してしまいますが、何だかんだ、あれからもう数年。
昔も今もここは、野望に燃える若者(劇団さんも、劇場スタッフも)が集まる劇場だと自負しています。
これからもそうあり続けるため、どうか今回、中止となってしまった演劇祭へのクラウドファンディングに、ご協力いただけますと幸いです!