<製作ノート③>最初の企画【2016年9月】
vol. 14 2021-09-11 0
2016年9月、本作が目指すべき方針を明文化し、ついに企画開発を始めました。
最初に書いた企画は『夢の中へ』というものでした。
怪獣の出現により、国土を放棄するか、高台へ移住するか、怪獣と共存し土地に留まり続けるかの選択を迫られるという、東日本大震災を明確に意識した内容でした。
これは、2012年9月以降、僕自身が震災の被害の大きかった宮城県気仙沼市に何度か赴いたときに聞いたことや感じたことを映画にしてみようと試みた企画でした。
(2012年9月13日、宮城県気仙沼市にて)
企画を書き終えたとき、「ああ、これで五カ年計画は決定した、これは面白くなる、5年もかからないかもなあ」、などと考えていました。
すぐさま友人たちに共有したところ、あまり芳しくないリアクションが返ってきました。
時間をおいて企画書を読み返したところ、僕自身、これは五カ年計画にはふさわしくない、と感じるようになり始めました。理由として、
・『シン・ゴジラ』の縮小再生産的な内容である
・製作費が膨大になりすぎる
・現在進行形の社会問題に対して、当事者でもなく詳しく知りもしない自分が、"現地でそう感じた"というだけの理由で、形だけの結論を作品の中で提示するのはいかがなものか?
・何より、"巨匠"志向すぎるというか、フィクションの娯楽映画の監督を目指す新人が撮る内容だろうか?
などを感じるようになりました。
そんなわけでこの企画は白紙に戻し、とにかくたくさん企画を書いてみることにしました。たくさん書くことで見えてくる何かがあるのではと考えました。
そして2020年に企画が決定するまでに、最終的に200案を超えるボツ企画が生まれました。
次回は、そんな「書いては消しの繰り返し」の日々について書きたいと思います。