取材報告:米農家の減少に揺れる上越
vol. 1 2025-12-12 0
米の価格高騰の背景には何があるのでしょうか?
農林水産省では猛暑による高温障害やコロナ禍後のインバウンド需要増大に原因の一端があるように発表していますが、偶然の重なりだけでは問題は説明しきれません。長年にわたる減反政策に加え、農業者の高齢化や自由貿易協定による国際競争力の低下もあって、米農家は過去20年間の間に約6割も減少してきました。作り手がいない状況で今後のお米の価格はどうなっていくのでしょうか?
制作チームでは地域の実態を学ぶべく、米農家の減少に揺れる新潟県上越市の中山間地域を取材しました。
「星の谷ファーム」を設立した天明伸浩(てんみょう・のぶひろ)さんは東京の生まれですが、1995年に上越市に移住し、以来30年近く中山間地域で農を営んできました。同じ新潟でも平野部の広い水田とは異なり、天明さんが住まう上越市吉川区川谷は傾斜の激しい地域です。広い水田はほとんどなく、テニスコート程度の大きさの棚田が何重にも折り重なっています。大型の機械では水田の中で方向転換し、折り返すことも難しいのです。まったく効率的に使うことができません。小型の機械や人の手がなければ農業は成り立ちません。
そしてお米を作るには自分の水田を維持するだけではなく、地域の他の水田もつながっている共用水路の整備も必要です。中山間の米作りはまさに「村なくして米なし」と言えるほど支えあいがなければ続けていけないのです。そうやって何十年、何百年と中山間の農家は稲作を受け継いで来ました。
そんな中山間地域での農業に天明さんは危機感を募らせます。
「中山間地域の崩壊がはじまっています。地域で人が暮らせなくなり、村がなくなったときに農業だけすればよいというわけにはいきません。ある程度人がいないと生活自体ができません。 … 農村でもちゃんと暮らしていけるような社会をどう作るかということを話し合っていかないと、農業問題は解決しません」
お米の価格を見るだけでなく、中山間地域のような機械による効率化が難しい地域、高齢化と過疎が進む地域で農業を支える方法とは? それを考えなければ日本の農業は壊滅的な状況になるかもしれません。そして令和の米騒動とはその氷山の一角なのかもしれません。
生産者の現実、長年の日本の農政の失敗、気候危機や国際市場化の課題――。今回の映像作品では米高騰にかかわるさまざまな問題点を明らかにし、変革に向けた提言を目指していきます。
引き続き制作状況をお伝えしていきますが、まだご参加いただけていない方はまずクラウドファンディングへのご参加をお願い致します。
「なぜ?お米の価格高騰:農と食の民主主義をめざすドキュメンタリー映像の制作」
募集締切:2026年2月10日(火)23時59分目標金額:120万円
https://motion-gallery.net/projects/parc_okome
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