<アップリンク代表・浅井隆さんに聞いた> 映画パンフレットはチャンス(後編)
vol. 13 2018-10-27 0
映画パンフレットは「チャンス」。
映画館の物販コーナーは「ヒント」の宝庫。
<アップリンク代表・浅井隆さんに聞いた> 映画パンフレットはチャンス(前編)に続き、後編では、いよいよ ”アップリンク流” 商品展開のお話、そして映画パンフレットの未来について浅井さんのお考えを伺っていく。気になる「アップリンク吉祥寺パルコ」新オープンの話題も!
――アップリンク渋谷は、カフェやギャラリーなど映画館以外の施設も充実していますね。
浅井:映画館という空間自体を楽しめるよう工夫している。実は、映画館に滞在する時間って意外と短いんだよね。自分の生活している場所から、街を経て、映画館に入って、暗闇で映画を観て、電気がついたらすぐ映画館を出て、また街の中に戻るじゃない? 映画を観る以外に何かできる場所がない。カフェがあれば、映画の前に時間を潰したり、誰かと待ち合わせしたりもできるよね。
――なかでも目を引くのが、2階の物販コーナーです。あれだけ広いスペースを使って物販を展開される意図は何でしょうか?
浅井:映画を観にくる人たちは、物欲よりも知識欲を満たしたいはず。アップリンクの場合、映画そのものよりも、別の知識、何かのヒントになるような商品を置くよう心がけている。例えばコーヒーのフェアトレードの映画を上映したとき、東京のおいしいコーヒー屋さんのガイドブックを置いたらものすごく喜ばれた。どんな商品を置くかは、現場のスタッフや、時には宣伝部も一緒になって考えているよ。
――多くのシネコンでは、映画パンフレットが手の届かない場所で売られている状況がありますね。
浅井:パンフレットが手の届かない場所に並べられているのは不思議だよね。関連グッズを買いたい人より、パンフレットを買いたい人の方が多い気がするけれど。簡単にぱらぱらっと立ち読みできない。最初にシネコンが設計されてから、物販コーナーの位置がある程度決まってしまったのかも知れない。
――「映画館で映画を観ることが豊かな体験だ」という意見もあるなか、アップリンクはSNSを活用したり、「UPLINK Cloud」などのオンライン映画館を開いたり、デジタル指向の取り組みにも積極的ですよね。そのようなデジタル化の潮流のなか、映画パンフレットは今後どのような存在になると思われますか?
浅井:映画の公式サイトの情報は、あくまで鑑賞する前の人のために書かれている。パンフレットはその逆だよね。映画を観てから買う。映画ファンのために、パンフレットは絶対にあった方がいいと思うよ。今の時代、過去の映画もDVDやオンデマンド配信で観られるわけだから、その一番の情報ツールだったパンフレットはどこかで閲覧できるようにするべきだよね。例えば、過去のパンフレットをPDF化してクラウドに上げるとか。国会図書館でも国立映画アーカイブでも、すべての映画パンフレットは取り揃えられていない。つまり文化として認められていないんだよね。国の機関は、過去のパンフレットのデジタイズを今すぐにでも始めるべきじゃないかな。
――今年12月には、「アップリンク吉祥寺パルコ」のオープンを控えています。こちらの施設でも、映画を総合的に楽しむための空間作りを意識されているのでしょうか?
浅井:そうだね。アップリンク渋谷と同じように、映画を観にくる人の知的好奇心に引っ掛かるような仕掛けというか、空間作りを心掛けているよ。物販コーナーも確保しているから、映画の関連本とかTシャツもそこで売ろうと思ってる。
こちらが「アップリンク吉祥寺パルコ」の模型。5スクリーン、合計300席の「ミニシアター・コンプレックス」と呼ばれる形態の劇場。各スクリーンにそれぞれのカラーがあるのが分かる。
この青い部分が物販コーナーになる予定だそう。12月のオープンが待ちきれない!
――浅井さん、お忙しいなかありがとうございました!
◆映画館情報
【アップリンク渋谷】
東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1・2
URL:http://www.uplink.co.jp
【アップリンク吉祥寺パルコ】(12月14日オープン予定)
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-5-1 吉祥寺パルコ地下2階
URL:http://www.uplink.co.jp
現在アップリンク渋谷で絶賛上映中の『顔たち、ところどころ』(監督:アニエス・ヴェルダ、JR)のパンフレット。こちらは、登場人物たちの切り抜きが可愛らしいページ。
(取材・文=高城 あずさ/写真=緑川 航平)