<ボンクラ映画館、座頭一が語る> 遊び心溢れる80〜90年代パンフ紹介
vol. 7 2018-10-15 0
遊び心か、監修のゆるさか、はたまた情報がなかったのか!?
80〜90年代のパンフには編集者、デザイナーが知恵を振り絞ったんだろうなと感じる、面白パンフレットがたくさんある。
題して、USAクラスの面白名作“駄・パンフ”たち
今回は、その時代を生きたボンクラpodcast支配人、座頭一さんに印象に残ったパンフレットを伺ってきた。
今でもその当時の記憶が蘇ってくる、全て僕の愛すべき「駄・パンフ」たち
(座頭一)
ーーお気に入りのパンフレットは 「ドランク・モンキー/酔拳」(78)とお聞きしました。
このパンフレットにはモンキーパンチさんによる書き下ろしの表紙と、企画ページがあるんです。当時は写真素材がロクになく、しかもジャッキー・チェンという名前もあまり浸透してなかったので、サブタイトルが“モンキー”だからというゆるいつながりでモンキーパンチさんにお願いしたと記事で読んだことがあります(笑)。酔八仙の型でやられ役があえて次元大介というのがまた最高にふざけていますよね。女仙人がブラジャーしているなんてシーンないですし、情報が少ない中で、緩く面白い方向で作ろうとしている感じがして……素敵な遊び心じゃないですか(笑)。
ーー当時は漫画家さんとのコラボが多かったのですね。
70年代頃から映画のコミカライズを行う等、漫画家を使うことで宣伝的な意味もあったのだと思います。ジャッキー映画でいうと、人気がでてからは表紙には本人の顔を用いたりと、パンフレットがジャッキーのグラビア集みたいになってきたんですけど、その中で、3度目のハリウッド進出を目論んだ 『レッド・ブロンクス』(95)の際にはハロルド作石さんがコラム漫画を描いています。『プロテクター』をおちょくったような「ハリウッド進出失敗第二弾」とかふざけてますし、師匠の顔とかもむちゃくちゃ似ています。ジャッキーへの愛を感じるんですよ。
また『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)で、みうらじゅんさんのコラム漫画も面白いです。映画秘宝創刊前だと思うんですけど、みうらさんは時代の空気感を捉えるのがうまいので、古い作品のパンフレットを読み返す人には「あの頃こんなんだったな感」が蘇ってきて大変好まれていると思います。
ーー情報が少ない中での工夫されたパンフレットが『死霊のえじき』(85)とお聞きしました。
レイアウトがとにかく斬新なんですよ! 最初のページでネガポジ同じ写真を反転させて作ったかっこいいページがあったり、どうしてだかわかりませんが斜め読みさせたり。また、プロフィールページでも斜体にしているんですけど、作風にそぐわないポップなレイアウトになっているんですよ! ページを埋めるのに必死だったのかなと思うようなところが多々ありました。
また、このパンフレットの面白いのが、公開の一ヶ月後に本作のビデオの広告を入れてるんですよ。この当時でもビデオが出るのに半年ぐらいかかる中で早い!と思いました。今でいうDVDスルー作品を無理やり劇場でやったみたいな感じだったんですかね?レンタルビデオ屋で借りればよかったって思っちゃいますよ!
ーー『ターミネーター2』(91)のパンフレットには子供心をくすぐるページがあったとか。
91年で一番の大作なだけあってパンフレットも豪華仕様なんですけど、そのなかでもダイヤルQ2ってご存知ですか?「0990」で始まる番号に電話をかけることで有料で各種番組(情報)を利用できるサービスなんですけど、パンフレットにそのサービスがあったんですよ。ターミネーターになってジョン・コナーを助けるゲームらしいんです、僕は通話料が高額になりそうな気がしてできなかったです(笑)。
あと、昔ながらってところで通販コーナーもあるんですよ。昔は流通が少なかったのか、なかなか劇場でグッズを販売していなかったのでパンフレットに載っている通販ページを使ってグッズを手に入れてたんですけど、ソフトビニールキッドの詳細欄に「サイバーダイン」という説明になっていない謎の言葉があって、むちゃくちゃ気になりましたよ。今でもわかんないのですが(笑)。
ーー表紙の派手さもよく注目されているんですよね?
昔はよく過大広告といいますか、出てこない登場人物を表紙に使ってるものもあったりしました。今日持ってきた『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(85)とか、表紙に載っている外国の人は基本出てないんですよ(笑)。『死亡遊戯』(78)のカリーム・アブドゥル=ジャバーみたいなキャラクターがいるので,無理やり足して派手さを増してると思うんですけど、最高にふざけてていいですよね。
ーー広告面も当時は見所みたいですね。
スポンサー広告を読むのも昔は楽しみでした。80〜90年代はハリウッドの役者さんのなかで、CMに出ている=一流ではない役者と思われる風潮があったみたいでなかなか出てなかったんですよ。その中で、日本映画のパンフレットには役者さんを用いた宣伝広告がでてくるんですよ。小遣い稼ぎにきているイメージですかね?今回持ってきたのは『ミッション:インポッシブル』(96)のジャン・レノの笑顔!作品内では悪役だったのに楽しそうですよね。
ーーご紹介ありがとうございました。今にはないパンフの魅力がたくさん詰まっていますね。
何より当時は観る側も情報がなかったのでパンフレットで映画を掘り下げることしかできませんでした。僕が主催しているpodcastで特殊造形師の方に取材したことがあるんですけど、昔は特撮造形カットを暗がりで一瞬写すことが多かったみたいです。理由の一つに、明るいところだと造形の仕掛けがバレてしまうんです。だけど、パンフレットにはその一瞬が載っているんですよ。だから何度も読み返しちゃいます。また、『エイリアン2』(86)などのメカやギミックが多い作品は、止まった絵が観ることができるだけで幸せなんです。写真を模写とかもしていました。
あとやはりお金がなかったので、映通社の300円リストを血眼のように読んでどのパンフレットを買おうか選んでいましたね。
――300円リストってなんですか?
僕は福岡出身で、手に入らないパンフレットは映通社さんという中古のパンフレットの通販を利用していました。最初に300円切手を送って在庫リストをもらうんです。そこからこっちで注文するのですが、映画と一緒で現物を送ってもらうまで中身がわからないのですよ。届いたものを読んで「写真多すぎるな」、「薄いな」など失敗も多かったです(笑)。でもそういったことも含めて映画の思い出ですし、今でもその当時の記憶が蘇ってきます。全て僕の愛すべき「駄・パンフ」たちです。
座頭一
(@WoodsOne)
福岡県出身。大学時代、白石晃士監督を輩出した映画サークルに在籍し、現在サラリーマンをするかたわら、旧作映画をメインに語るポッドキャスト「ボンクラ映画館」を管理。作中の登場人物がボンクラか、ボンクラな観客に支持されている作品を選考基準に月一ペースで更新している。中野英雄、山本竜二といったゲストを迎え、他所では聴けないエピソードを紹介。
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(取材・文/岩田)