コラム-5 「スクリャービン〜“ヤバめ度”高い、ロシア現代音楽のパイオニア」
vol. 5 2017-12-26 0
目標金額600,000円に到達し、CD制作決定!コレクターの皆さまのお手元に、確実に
コンピレーションアルバム「濃厚、濃密!ロシア音楽の世界」をお届けします。
そしていま、次のゴールを目指しています。
800,000円到達で「お礼の特別番組を生放送」
あと約5万円まで届いています。
2017年の最後を飾るにふさわしく、ゴールを皆さまと共に駆け抜けたい・・・
残り3日、引き続き応援をお願いいたします。
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スクリャービン〜“ヤバめ度”高い、ロシア現代音楽のパイオニア
目標額達成! コレクターのみなさま、本当にありがとうございます!
今回のコラムの主人公は、前回登場したラフマニノフの同級生です。その名はアレクサンドル・スクリャービン(1872〜1915)。二人はモスクワ音楽院で同級生でした。
ラフマニノフは巨大な手をもち、その演奏技量は大変に優れていました。一方のスクリャービンはとても小さな手をしていました。躍起になって練習に励んだ結果、彼は右手を傷めてしまいました。音楽院はピアノ科を2位で卒業しています。1位はラフマニノフでした。
しかし、作曲家としての進取の気性においては、スクリャービンはラフマニノフを凌いでいると言えるでしょう。ラフマニノフが伝統的な作風で才気をふるっていたのに対し、スクリャービンは独自の視点に基づく先駆的なアイディアを作品に盛り込んだのです。
彼の初期の作品こそショパンの影響が色濃く、ロマンティックな作風が目立ちますが、20世紀に入ってからはメキメキと独自の世界を展開しはじめます。
その代表的な着想が「神秘和音」です。 彼は生涯に10曲のピアノ・ソナタを残していますが、ソナタ第4番(1903)からはこの「神秘和音」が姿を見せ始めます。
ド−ファ♯−シ♭−ミ−ラ−レ。
こんな独特な浮遊感のあるハーモニーです。この、何かを暗示するような神秘的な響きは、ニーチェの哲学やブラヴァツキー神智学に心酔していたスクリャービンがたどり着いた境地です。
神智学によって、スクリャービンは自己と絶対者(=神さま・宇宙)との一体化を信じるようになり、「神である自分」を思い描きながら、ある種どんどんアブない(?)思想へと自らを駆り立て、周囲からは妄想狂呼ばわりされたこともありました。今風に言うと「ヤバい人」状態でしょうか。
そんな彼は私生活においても、なんと妻ヴェーラと4人の子どもを捨ててロシアを離れ、ピアノの弟子であり愛人のタチアナのもとに走るという人でなしぶり、もとい、芸術家肌ぶりを見せ、彼女といっしょにヨーロッパを転々とします。
その間に、音楽と神智学とをドッキングさせたオーケストラ作品《法悦の詩》(1905~07、神と人間との合一をテーマにした単一楽章の壮大な作品。通称、交響曲第4番)や《プロメテ—火の詩》(1908~10、交響曲第5番)といった代表作を発表しました。
後者は、オーケストラ(オルガン・ハープを含む巨大編成)とピアノ、合唱のほかに色光(!)を取り入れ、ヤバ度も究極極まれりといった作品。この曲のために開発させた「色光ピアノ」によって、特定の色の照明を鍵盤によって操作することが意図されたようなのですが(ちゃんと楽譜にも指示が記載されている)、初演では装置が壊れ失敗に終わったそうです。あらら……
コンピレーションCDには、スクリャービンの作品ももちろん収録します。
ですが、このアルバムには強烈な後期作品ではなく(ご興味を持たれた方、すみません!)、
あえて、非常にチャーミングなピアノの小品、しかも54秒しかない曲を選びました。
6つの前奏曲 op.13から、第5番 ニ長調です。
ドーンと重めな、ミャスコフスキーの交響曲第24番第二楽章に続いて、このスクリャービンの作品が鳴り響きます。キラリと光る、若きスクリャービンの音使いのセンス、彼のチャーミングな一面を感じ取っていただければと思います。