vol.3 御輿が上がった
vol. 3 2015-09-10 0
LAST ONE MILE PROJECTの仲間たち
あの時の感動を,僕は今でも鮮明に覚えています。
約束の地,雄勝で,僕が作った御輿が上がった瞬間の事を。
たくさんの想いを込め,出来上がった御輿。出会った事のない人たち。
まだ,そんなに行った事のない場所。
僕はあの日,どんな思いで軽トラックを運転していたのでしょうか。
御輿完成に到るまで,本当にいろんな想いが巡りました。
深夜の高速を走らせ,トラックは雄勝へと向かいます。
小さなキャビネット,僕はシフトレバーを握っていました。
雄勝へ着くと,どうでしょう。たくさんの仲間がいました!赤いTシャツを着て,爽やかな笑顔で。
「はじめまして!よろしくお願いします!」
そんな声に,どんなに救われた事でしょう。
そこでの出会いに,どんなに感謝したことでしょう。
これから始まる素敵な物語に,僕はまだ必死で何も気づいていませんでした。
御輿があがった!
御輿は上がりました!エッサ!ホイサ!の掛け声とともに。
大きく揺れ動き,御輿に命が吹き込まれました。
僕は必死に御輿を抑え,ホイッスルを吹いていました。
雄勝のたくさんの人たちが見ていました。
涙を浮かべている人もいました。小雨が降る日でした・・・。
僕はこの日を忘れることはないでしょう。2011年11月19日,20日の二日間です。
とても寒い日でした,雨も降る,冬の東北地方。
しかしそこには熱気が生まれました。
「震災前の雄勝を,少しだけ思い出したよ」
そう、言ってくれた人がいました。
御輿は一人じゃ上がらない。
いつも,祖父はそういっていました。みんなの力で,上げるしかないのです。
僕は,この御輿を共に背負っていく事でみんなの力で雄勝を背負うシンボルになればと考えていました。
僕は,雄勝の人ではないから,これまでも,これからもほんの小さな事しか出来ないけれど,雄勝の未来へ向け肩を入れさせてください。
そんな思いで御輿を作っていました。
一年に一回でも,雄勝へ集まるきっかけになりますようにと。
一年に一回でも,雄勝を思い出すきっかけになりますようにと。
頼雄さんと御輿
その夜,僕ら担ぎ手は,荒浜という浜の公民館をお貸しいただき,泊めてもらいました。
LOMの仲間達は確か,シャケを捌き鍋を作っていたような気がします。
僕は,あまりの疲労ととりあえず胸をなでおろすことが出来たことですぐ眠りについてしまいました。
その日は夜遅くまで,みな雄勝の夜を楽しんでいたんだと思います・・・。
その時一緒にいたメンバーは,初めて会ったその日からずっと今も友達でいてくれています。
雄勝がくれた本当に宝物。今回の恩返しの,とても大きな理由です。
夜。御輿はまだその時残っていた被災した雄勝総合支所の軒下に収められていたようです。
そして,その隣で,頼雄さんは車を停め,共に一晩を明かしたそうです。
頼雄さんにとって,雄勝の人にとって!
震災が起きてからやっと仮設の商店街が出来上がりお祭りが出来たこと。
どんなに大きな思いだったのでしょう。
僕らは,その思いに寄り添うことは出来ません。
僕らが雄勝のために出来ることなんて,小さな小さなことなのでしょう。
だけど,僕は,御輿が好きだから!
必ずお祭りは,人を元気にする力があると信じていました。
明日も,お祭りです。
二日目の夜,忘れられないフィナーレが待っていました・・・