制作日記#4 「言葉を産む言葉」( 花田 )
vol. 4 2023-10-09 0
長年いろんなところで子ども達に絵本を読ませてもらっておもしろいなと感じるのは、子ども達が発する言葉です。
絵を見て(絵を読んで)見つけたものを言葉にする時もあればお話から感じたことを言葉にする時もあるし、絵本を読んでもらって思い出した絵本とは全く関係ないことを喋りだす子どももいます。それらは全てその時その瞬間に発せられます。私は出来るだけ受け止めるようにしています。
なぜなら、人は心が動いた時に言葉を使うからです。だから言葉を通して子ども達の動いた心を受け止めたいのです。
あかちゃんもおもしろいです。あかちゃんの反応は、じっと見る。私の声を聞きながらじっと見続けるという反応です。口が動く時もありますが声にはなりません。でも声が出たり顔が動いたり笑う時もあります。それらの反応はあかちゃんが絵本に興味を示している、絵本を楽しんでいる証拠です。そしてそれらの反応は、ただ絵を見せているだけの時ではなく、
絵を見せながら言葉で語りかけている時に多く現れる反応です。
言葉が熟成する過程を見せてもらえて本当におもしろいです。
人は心が動いた時にその動きを伝えたくて言葉を探し、見つけた言葉、自分が納得した言葉で表現しますが、今回の絵本『ねこはねこのゆめをみる』はその最初の段階となる、動く前の心に丁寧に語りかける絵本にしたいと思っています。
作者の一人である松村さんの短く少ない文章は、文字数と対照的に壮大な生命の循環の物語を語っています。文章からは読者に何かを伝えようとか教えようとする意図は感じられず、全てを読者にゆだねています。それは勇気のいることですが、とても素敵です。
私には一つ一つの言葉の間に宇宙空間が存在しているように感じられます。この空間は私たちの心と同じ。頭で考える前にただ読んでもらいたいと思います。
松村さんの文章が、『言葉を産む言葉』として皆さんに届くような絵本にしたいと思います。
(花田睦子)
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