制作日記#2 「絵本とは、読んでもらう本である。」( 花田 )
vol. 2 2023-09-16 0
講演に出向くようになって約 20 年、私が変わらずに伝えている一番大切な事です。 読んでもらう本=読み手と聴き手で楽しむ本です。 これは字が読めようが読めまいが関係ありません。大人でも、絵本は読んでもらってください。自分 で読んではいけないという事ではなく、もちろん自分で読んでも OK です。 むしろそういう絵本もあります。でも基本的に絵本は読んでもらうように作られているのです。 自分で読むのと読んでもらうのとの大きな違い、自分で読む事では絶対に出来ない事、それは絵を見ながら耳から生の声で語られるお話が入ってくるという「同時体験」です。 いえ、「瞬時体験」です。 この「瞬時体験」をするからこそ、絵本の絵が聴き手の子ども達の頭の中で動くのです。
絵本の特徴、それは「絵が語っている」事です。その語っている絵を読めるのが子ども達です。文字を覚えるまでの子ども達は、特に絵を読む力が育ちます。絵本は、絵を読まないと、本当に絵本を読 んだことにはなりません。 絵を見ながら耳から生の声で語られるお話が入ってくる「瞬時体験」によって、「語っている絵を読む」 ことができ、本当の意味での「絵本体験」ができるのです。
また「生の声」で語ることは何よりも大切です。声が大事なのではなく「うちのお父ちゃんの味、お母ちゃんの味」が何よりも大切なのです。言葉に障がいがある方は手話で OK です。 「何を読むかより誰が読むか」、「何を読んでもらうかより誰に読んでもらうか」、絵本とはそういうツールなのです。
11 年前から京都市内の大学で絵本論という授業を担当していています。
2,000 人もの学生さん達と授業で出会い、読んでもらう事の答えをもらい続けています。 私は授業内でいっぱい絵本を読みます。すると頼んでもいないのに勝手に学生さん達が感想を書いてくれます。1 回の授業で 150 人、1 年で 2,250 枚もの感想が寄せられます。 そのほとんどが、子ども時代に絵本を読んでもらった思い出話です。「いつも母が途中で寝ていた」「姉妹で絵本の取り合いになって絵本がビリビリだった」「1年も同じ絵本を読んでもらっていたのに題名を覚えていません」等々。 そうなのです。絵本は「読み手の愛が勝手に伝わり、勝手に聴き手の心の奥深くに残り続けてしまう という、ひじょーに不思議な道具(ツール)」なのです! 子ども時代に大切なのは「愛された歓びの記憶」です。それが生きる力の元となるのです。
( えほん館代表 花田睦子 )