制作日記#1 「子どもを眠りに誘ってくれる絵本」( 鋤柄 )
vol. 1 2023-09-08 0
「どんな絵本を作りたい?」と自分に問いかけると、「子どもを眠りに誘ってくれる絵本」という答えが見つかった。
子どもはとにかく寝るのを嫌がる。お昼寝も夜寝るのも嫌がる。眠くてフラフラしているのに寝ることに抵抗する。どうして寝るのを嫌がるのだろう。もっと遊んでいたいから?夢の世界が怖いの?なかなか寝てくれない息子に疲れ果て、つい「早く寝ないとお化けがくるよ」と最終手段を使ってしまう日々。寝ることを怖いことではなく、良いイメージに変えてくれるような絵本を作りたいと思う。
息子が赤ちゃんの頃は数時間おきに寝て起きるを繰り返し、その度にぐんぐん成長した。それは本当にびっくりするようなスピードだった。3歳になった今も眠りと成長は直結している。息子にとって夢の世界は現実と同じ重さで存在し、夢での経験が息子を成長させているのかもしれない。私の短い1日に息子の長い1週間が詰め込まれているような感覚。寝て起きた後は確かに息子なのだけど、寝る前のあの子とは違っている。息子が寝るのを嫌がるのは、最後の別れを惜しんでいるからなのかもしれない。朝が来るとこの子にはもう二度と会えない。そう思うと今この瞬間の息子と過ごす時間がとても愛おしく思えてくる。
ねこは私とは違う時間と空間を生きているのかもしれない。不意に現れたりいなくなったり、突然怒ったり甘えてきたりするから、瞬間移動したのかあるいは違うねこに入れ替わったんじゃないかと思ってしまう。ねこがこちらをじっと見つめてくることがある。目が合っているのに目が合っていないような感じで、正面から見られているのに同時に後ろから見られているような不思議な感覚。私には見えていない私の何かをじっと見ている。私たち人間の時間は過去から未来へと一直線に進む。進みっぱなしで戻ることはない。ねこの時間は線ではなくて点で、過去から未来へと順番に進むのではなく、時間を自由に行き来し、複数の時間に同時に点在している。過去や未来を同時に経験しながら、今この瞬間を生きている。ねこにとって夢をみるということは、時間を行き来する移動手段なのかもしれない。そんな想像を膨らませながら絵本「ねこはねこのゆめをみる」を作っている。
絵本「ねこはねこのゆめをみる」を寝る前に子どもと一緒に読んで欲しい。言葉の響きや絵の空気を子どもと一緒に感じ、過去や未来に囚われている心を、今一緒にいる子どもに向けてもらえたらいいなと思う。(鋤柄)
- 前の記事へ
- 次の記事へ