「音楽本大賞」受賞作発表!
vol. 15 2023-05-16 0
こんにちは、音楽本大賞実行委員会です!
昨5月15日に最終選考会議を実施し、記念すべき第1回音楽本大賞の「大賞」受賞作を決定しました。各選考委員の選んだ「個人賞」5作と、インターネットでの投票(総数271票)により第一次選考を通過した43作から選ばれた「読者賞」とあわせて発表いたします!
なお、大賞、個人賞、読者賞の授賞式を、2023年7月9日(日)19時より、東京・下北沢の本屋B&Bで開催します。
【音楽本大賞】(賞金10万円)
柳沢英輔著『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』フィルムアート社
http://filmart.co.jp/books/art/music/field_recordi...
[選評]
横川理彦(選考委員長)
「フィールド・レコーディングを広く知ることができ、一般読者の誰でも楽しめる。たいした機材でなくても、みんながフィールド・レコーディングをしたらいいのでは。広く読まれていい本。」
小室敬幸
「研究と実践に垣根なく取り組んできた著者ならではの内容で、敷居の低さと裾野の広さを両立させた良書。自らが考える可能性に沿ってフィールド・レコーディングという主題を戦略的に切り拓いていく姿勢は、実に刺激的だ。」
松平あかね
「人は音をどう聴くのかという根幹について考え直すきっかけになる。誰でも簡単な機材を持って外に飛び出せば、クリエイティヴィティを発揮できる。ポジティブな感覚で紹介できる本だが、その一方で録音がゆるされない民族や地域もあるので、そうした禁忌とどのような距離を取るべきか、それぞれが注意深く考える必要がある。」
渡邊未帆
「まず、丁寧な構成がとてもよい。そして、実際にやってみたくなる。これを読んでバイノーラルマイクを買って商店街を歩きながら録音したら、雑踏の中のリアルな会話が録音されていてドキリとした。聴覚におけるプライバシーの問題などにも気づかされた。」
輪島裕介(ゲスト選考委員の輪島さんからもコメントをいただきました)
「録音と音楽ははたしてどういう関係なのか。録音は、どこまで音楽なのか。そもそもこの本が「音楽本」であると留保なしで言っていいのか。そういったことを含めていろいろなことを考えさせ、自分でもやってみたくさせる素晴らしい本。」
【個人賞】(賞金各2万円)
横川理彦選
ヴィヴ・アルバーティン/川田倫代(訳)『服 服 服、音楽 音楽 音楽、ボーイズ ボーイズ ボーイズ』河出書房新社https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309291888/
「パンクの最重要バンドの一つ、ザ・スリッツのギタリスト、ヴィヴ・アルバーティンの自伝。ロンドン・パンクの成立事情、ヴィヴィアン・ウェストウッドの威厳、シド・ヴィシャス、ミック・ジョーンズ(ザ・クラッシュの)、ジョン・ライドンなどのリアルな姿、ザ・スリッツの成立からライブ・ツアー、レコーディングなどが明らかになっていくのは当然面白いのに加え、スリッツ解散後50代でソロ・アルバムを出すに至るまでの過程にも感動する。素晴らしく正直で力のある回顧録だ。」
小室敬幸選
エンニオ・モリコーネ、アレッサンドロ・デ・ローザ/石田聖子、岡部源蔵(訳)『あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』フィルムアート社
http://filmart.co.jp/books/music/ennio-morricone/
「映画音楽の巨匠としてというよりも、自らの思いとは裏腹に前衛音楽と付かず離れずの関係を続けた、ひとりのイタリア人作曲家による回顧録。ケージやブーレーズらの著作と並んで、20世紀の西洋芸術音楽を語る上での必読書にならんことを。」
松平あかね選
田崎直美『抵抗と適応のポリトナリテ ナチス占領下のフランス音楽』アルテスパブリッシング
https://artespublishing.com/shop/books/86559-248-1...
「対独協力か、抵抗か。ヴィシー政権下のフランスで、立場の表明を迫られた音楽家の運命が克明に記された一冊。国家政策の闇を音楽面から掘り下げた貴重な研究書であると同時に、読み物としても胸に刺さる。」
渡邊未帆選
後藤護『黒人音楽史 奇想の宇宙』中央公論新社
https://www.chuko.co.jp/tanko/2022/10/005585.html
「無数の小さな叙述から新たな「黒人音楽史」のパースペクティブを編んだ怪作。黒人の知性に博覧強記と魄乱狂気?の紙一重で迫る本書では、人間がマニエリスム的遊戯によってイマジネーションの彼方へ跳躍可能であることが明示される。これぞ芸術の営み。」
輪島裕介選
中野正昭『ローシー・オペラと浅草オペラ』森話社
http://www.shinwasha.com/
「国家の威信を背負った19世紀的な高級文化としてのオペラを求めた日本人と、20世紀の大衆消費社会に即したプロの芸人・ローシー。ボタンの掛け違いから始まった曖昧な日本の歌劇。「演じられる音楽」についての、演劇学からの鋭い挑戦。」
【読者賞】(同票で2作受賞)
大嶋義実『演奏家が語る音楽の哲学』講談社
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003...
読者からの推薦理由(一部抜粋)
「専門知識がなくとも本として読み進めると著者の音楽に対する深い価値観に共鳴できる。これこそ音楽本だ。」
「演奏者でなければ気が付かない音楽演奏の蘊蓄について語ってくれていて、音楽を聴く楽しみが増えます。」
柳沢英輔『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』フィルムアート社
http://filmart.co.jp/books/art/music/field_recordi...
読者からの推薦理由(一部抜粋)
「自分を取りまく、これまで気づけなかった事象を音で感じることの魅力をこの本で知ることができたと思います。」
「フィールドレコーディングという分野を丁寧にかつ、明確に学問として引き上げた功績は大変意義のある功績だとおもいます。」
2023年5月16日
音楽本大賞実行委員会(鈴木茂、木村元、岸本洋和、河西恵里、山崎圭資)