レコーディングのこと〜その1〜
vol. 4 2016-03-22 0
こんにちは、松本佳奈です。
なかなか書けなかったレコーディングのこと。
何度も記事を書いては、途中で進まなくなって、停滞していました。
支援してもらっているんだから、良いことを書かないと。
完成を楽しみに、わくわくしてもらえるようなことを書かないと。
…と、考えすぎていたのかもしれません。
正直なところ、今回のレコーディングは楽しい反面、自分の「見たくない部分」と直面した苦しいものでした。真剣にものづくりをする時、ごまかしたり隠したり、ということができなくなります。
いちばんの壁になったのは、意見をぶつけるということができない私の性格でした。
楽曲アレンジのことで、担当して下さった佐々木真里さんと何度も打ち合わせを重ねましたが、私がイメージするものと、真里さんが客観的に見て「こうしたほうがいい」と思うものが違うとき、「それでも私はこうしたいです」と言うことがとても難しかったのです。
「わがままを言わないいい子だね」「あれが欲しいこれが欲しいと言わないいい子だね」と家族から言われていた幼い私は、ほんとうは欲しいものがあっても我慢して育ってきました。大人になってずいぶんと「自分は今、こうしたい」を主張できるようになりましたが、ガツンと怒鳴られたり「こうじゃなきゃダメ!」と強く言われると、萎縮して、言いなりになってしまう癖がどうしても根深く残っています。
「意見をぶつけ合って、より良いものにしていく」という真里さんの言葉を頭では理解できているものの、「こっちのほうがいいよ」と言われると、どうしてもそこに反論ができず。本当に思っていることを口にしようとするだけで涙が出てしまう有様。そうやって、意見があるくせに言わない態度に周りがイライラしているのもすごくわかるのに。
けれど、こんなにもモヤモヤする、納得がいかないってことは、私の中には確固としたイメージがあるんだな…譲れない部分があるんだな…と、思い知りました。
「私は音楽を通じて、年齢・性別・価値観もバラバラな人達が、互いを否定し合わずに共存できる場所を作りたいだけだから、ミュージシャンではない。音楽詳しくないし、アレンジとかよくわからないし、譜面も読めないし、ピアノも苦手だし、歌だって、私より上手な人は山ほどいる。だから音楽的な部分はわかる人にお任せします!」
約10年、本気でそう思って活動していました。半ば卑屈になっていたところもあると思います。周りと比べて落ち込むこともよくあるし(今もあります)強気な歌をうたっているくせにほんとうに自信がなくて、迷いだらけ。だけど今回、アレンジでぶつかったことで、私はどういう音楽がやりたいのか、ちゃんと心の奥底に持っているんだなと知りました。
そして私は、自分の声を、書く詞の世界を、メロディを、ちゃんと「好き」なんだと思いました。
自分の声や曲を「好き」と、言えなかった。
それはもちろん、根底では好きなんですけど。「お前の音楽全然良くない」と言われた時にショックを受けすぎないように、「ああ、そうですか。わかっているので大丈夫です」と言えるようにしていたんだと思います。なんという複雑さ!
否定された時に、心が壊れないように、予防線を張るのです。
自分のほんとうの気持ちを言うことはわがまま→だから言わない、言えない
ほんとうの気持ちをやっとの思いで口にした結果否定される→心クラッシュ
…自分が面倒くさすぎる…
そう…今回、そんな自分の面倒くささと正面から向き合い、人に説明し、時間をかけて意見を折り合わせていく…という作業が、何よりも大変だったのです。
そんな風に、とことん自分と向き合い、真里さんと向き合い、出来上がったアレンジです。
「こうしたい」を貫いた部分もあるし、「こうしたほうがいいんじゃない?」を取り入れた部分もあります。アレンジひとつで本当に曲のイメージが変わるんです。
妥協せず、やりました。
どうしても、この葛藤部分を正直に書きたかった。
私が自分を紐解くことが誰かの道標になるかもしれないので、ちゃんと書きたかった。
毎回アルバム作りは、すんなりといきません。前作の時もこういう葛藤はありました。誰かと一緒に物を作るってそういうことなんだろうな、とも思います。
もう、卑屈の殻に篭っていたくはないので、少しずつ少しずつ、人との関わり方を学んでいきます。産みの苦しみ。諦めず投げ出さず、関わってくれている周りの人達。ほんとうに有難いなと思います。
きっとこの経験もまた曲に還ってきます。
人としての成長=音楽の成長、まさに、です。
あと少しで、完成。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
松本佳奈