『マリの話』監督インタビュー【後編】
vol. 16 2023-11-28 0
いつも応援ありがとうございます。監督の高野です。
『マリの話』公開は来週12月8日 金曜日、クラウドファンディング期間は残り3日となりました。
「関西でも上映して!」「パリでも見たい!」「"マリの話2" を撮って!」というお声をいただき、何とか実現するために("マリの話2"は保留ですが...)、ファンディング最終日の11月30日まで引き続きこのプロジェクトを告知してゆきたいと思います。
すでに多大な応援をいただいており恐縮なのですが...、
よろしければ周りの方にこのプロジェクトのことをお知らせいただけると、大変ありがたく思います!
本日は監督インタビューの【後編】をお届けします。
インタビュー前編を読んでいただいてからお読みいただくと、面白さが倍増(?)するかもしれません。
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『マリの話』高野徹 監督インタビュー【後編】(取材・文/吉野大地)
──観客の想像力の度合いで、かなり印象が変わる映画だと思います。可変性が高いと言えそうな。
試写を見て細馬宏通さんが書いてくださった作品評を読むと、独特の見方をされていて驚きました。
僕のイメージでは、各章のあいだに──半年なのか1年なのかは明確ではありませんが──時間の隔たりを設けています。たとえば第1章と2章のあいだでマリと杉田が映画を撮ったこと、第2章と3章のあいだではふたりの関係に変化が生じたことが想像できます。そのように画やセリフの説明がなくても、無理のない範囲で各章のあいだを想像してもらえるように、と全体を設計しました。
──想像のための手掛かりもありますね。
そこはかなり考えました。想像する材料になるものがないと観客は楽しめないし、どんな材料だとより楽しんでもらえるか、脚本づくりではそのことを重要視しました。
──第2章をマリのフレームアウトで終えるのも見どころです。あのカメラワークはどのように決められたのでしょうか?
第2章は元々脚本にはなく、撮影前日に急遽、撮ることを決めたエピソードです。現場で考える時間がなく、事前にカット割りを決めて撮影監督のオロール・トゥーロンさんと共有していました。ぼくはロケ場所のTCC試写室を訪ねたことがありましたが、彼女はロケハンをしていなかったのでほとんど準備なし、かつ短時間の撮影でもシーンを成立させてくれた。それは彼女の能力の高さを物語っていると思います。
元々用意していたカット割りでは、斜めから撮った成田結美さんに最後にフレームアウトしてもらう予定でした。それが現場でいざ撮ってみると「この演技は正面から撮りたい」と強く思いました。というのも、僕は過去作で人物の感情が動く瞬間をあまり撮ってこなかった。でもあそこでマリが言葉を発する姿にはそういうものが宿っていると感じて、成田さんに「もう一度だけ正面から撮らせてください」とお願いしたんです。成田さんのおかげで今後、自分が撮るものに変化を強いられるような、力強いものを撮ってしまった感覚があります。
──アクシデントを取り込んだり、いわば身近なものが創作源になっていますね。
本当に多くのアクシデントがありました(笑)。その都度、状況に応える形で、撮影が可能になるよう脚本を変更したり、逆にアクシデントからアイデアをもらったり。そもそもパリで始めた短編に、追加撮影することで出発時の構想とまったく違う、自分でも想像していなかった映画が完成しました。時には行き当たりばったりに、身近なものや偶発的要素を採り入れていった結果、構成や設定が少し歪んでいる。でも、その感じが変で面白いなと作者としては思っています。
今回の劇場での上映を通して、『マリの話』は何を達成したのか、観客の皆さんと一緒に発見できたらうれしいです。
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*吉野大地さん取材による「監督 "ロングインタビュー"」は後日、神戸映画資料館ウェブサイトに掲載予定です。