濱口竜介監督からの応援コメント
vol. 15 2023-11-26 0
いつも応援ありがとうございます。監督の高野です。
上映に向けて準備をしていると予期せぬ再会や出会いがあり、毎日、心動かされます。皆様の応援があって、楽しみながらも、活動を頑張れております。ありがとうございます!
本日は濱口竜介監督からいただいた応援コメントについて、どうしても皆さんにお伝えしたいことがあり、アップデートを更新します。
先月の初旬、かねてからお願いをしていた「応援コメント」を濱口監督に寄せていただきました。現在、ありがたく映画のチラシなどに掲載させてもらっています。
このコメントをいただいた時、走馬灯のようにたくさんのことを思い出しました(まだ死んでいませんが)。
なかでも、濱口監督からこれまでにもらった2つの言葉が、ぼくにとっても "得体の知れない"『マリの話』を撮るよう、導いてくださったのではないか。そんな気づきがありました。
ひとつ目の言葉は、2015年に撮影した、僕の監督作の短編『二十代の夏』(42分) 、の「70分版」を濱口監督に見ていただき、長い長い感想メールを受け取った時のことです。
監督の自分としては、70分版『二十代の夏』の出来には納得できていませんでした。
しかし編集でどうすれば納得できるものになるのか方法がわからず、自分で設定したお披露目上映会も迫っていたため「完成」として発表、上映しました。
でもその後、ずっと悔やみ続けていました。もっと編集で、できたかもしれない———。
当時、アメリカで長期の海外研修中だった濱口監督に映画の感想を求めたく、ブルーレイディスクを国際郵便で送りました。そうすると、ある日、5千字を超える感想メールが届きました。自作に対して、こんなに言葉を紡いでもらったのは、はじめての経験でした。
驚いたのはその分量だけではありません。
そのメールには、「この映画は、もう少しで観客が楽しめる映画になりうる」ということが具体的にひたすら書かれていました。
そのとき僕は、不意にぶん殴られたような衝撃を受けました。
「濱口さんは観客に楽しんでもらうために映画をつくっているのか...!」。バカみたいですが、映画の先には観客がいるということを、はじめて気づかせてもらいました。
次に映画を作るときは、観客に楽しんでもらいたい、「面白い」と思ってもらいたい、そのために映画をつくりたいと素直に思いました。
もうひとつは、『偶然と想像』の助監督として撮影に参加した時のことです。脚本と同時に受け取った「企画書」には、以下の一文が書かれていました。
「もし人とは違う作品をつくりたいのであれば、人と違うつくり方をする必要がある」
なんとなく理解できる気はするけれど、自分にとって実感が伴わない一文でした。当時も濱口監督に「どういうことなんですか?」と質問をしましたが、腑に落ちることはありませんでした。
自分で経験するしか、真に理解できないと思いました。
フランスで撮影を開始した『マリの話』は、意識的にも、状況に応える形でも、人と違うつくり方を実践することになりました。とりあえずやってみて、失敗したら、違う方法を試してみる。
贅沢だけど、気が狂いそうになる、そういう映画制作をひらすら繰り返し、完成させました。その結果、「本当に、人とは違う作品ができた!」という実感があります。
「面白い。しかし、この得体の知れなさは何だか恐ろしくもある」
この言葉に、ぼくの2015年からの活動のすべてが凝縮されている。そういう感覚を持ちました。
ここまで書いたことは、「映画を見てほしい!」「応援してほしい!」という通常の宣伝の言葉としては、ふさわしくないのかもしれません。なにか「社会を変えたい!」というような力強いメッセージではないし、ただただ極めて個人的なことを書きました。
でも、きっと、この個人的な思い「面白い映画をつくりたい!」「人とは違う映画をつくりたい!」に反応してくれる観客もいるはずだ、という確信もあり、書いてみました。
現在、12月の下北沢K2での上映準備でいっぱいいっぱいではありますが、
せっかくこのクラウドファンディングという機会をいただきているので、「『マリの話』を全国に、そして世界に届けたい!」という強い気持ちもお伝えしておきたいと思いました。
設定したストレッチゴール220万円までは、まだ果てしなく遠いです。しかもファンディング期間はあと4日。
それでも、まだ見ぬこの映画『マリの話』に価値を感じてくださったら、ご支援をいただけないでしょうか? 追加でいただいたご支援は、『マリの話』の拡大上映と海外映画祭出品費用に使わせていただきたいです。
この映画を応援してくださる皆さんと一緒に、ワクワクするような未来を実現させたいです。
どうぞよろしくお願いします!
監督・高野徹