山本芙沙子さん:出演者インタビュー
vol. 87 2015-10-24 0
今回のインタビューは、
ゲーテ診療所の看護師フサコ役の山本芙沙子さんです。
山本さんは、舞台『ゲーテ先生の音楽会』シリーズの
一回目から舞台にご出演されており、
また皆様ご存じのとおり、この映画の広報も担当されています。
普段のお仕事では、ダンスとフラワーアレンジメントを融合した
パフォーマンスをされていて、今回の映画では
生花の美術もご担当されました。
-撮影が終わられてのご感想をお聞かせください。
私は現在妊婦で、東京ロケは出産予定日の一か月前でしたので、
出産前に無事に撮影が終わりまずは一安心しました。
映画製作は本当に多くの人が関わっていますから、
皆のスケジュールを乱してはいけないという思いがありました。
今回の映画には、フサコ役を演じる役者、
映画美術としての花屋、そして映画の広報担当という、
三つの側面から関わっていました。
役者という観点では、まず妊婦姿で産婦人科にいるという設定自体が、
今の自分自身と重なっているので、素に近い状態で撮影に臨みました。
撮影中もお腹の子供が動いたりして!かなりリアルでしたね(笑)
舞台と映像では意識する空間の拡がりが異なりますから、
演技の上ではカメラ位置や角度によって目線や動作を
どう変えればいいのか、またそれが映像上でどう映っているのか等、
舞台と異なる部分が多くて。その点は苦心しました。
井川さんの舞台演出では、”今、この瞬間” の役者の良いところや、
お客さんの状態を確実に捉えて演出していくのが特徴の一つですが、
映画の撮影中も同じものを感じました。
その瞬間の役者の状態、現場の空気感、天気や照明の状態などを
瞬時に把握して、それに応じたベストな演出をその場で行い、
映像に閉じ込めていく。
応えるスタッフ・キャストは臨機応援に対応する能力を求められるため
大変ではあるのですが、出来上がったものはより生き生きしたものに
なっていて、やりがいがあります。
生花の美術担当の視点からは、台本上では同じ日のシーンを
複数日にまたがって撮影する可能性があったこと、
また、カフェでの撮影でオイルランプを使用しましたので、
室内の温度が上がり、花の状態を保つための管理に苦心しました。
あらゆる状況を想定して準備していたつもりですが、やはり植物は
コントロールしきれない部分もあり。その点は悔しかったですね。
ただ、監督の演出もカメラさんも照明さんも本当に素晴らしくて、
映像の中でお花が本当に輝いている瞬間を何度も
見ることができました。
実際の映画の中でどう使われるかはわかりませんが、
あのように美しい映像を見ることができたことは、
ずっと忘れないと思います。
―舞台『ゲーテ先生の音楽会』には、シリーズ一回目から
ご出演されていますが、シリーズの魅力について
お話を伺えますか。
『ゲーテ先生』シリーズの魅力ですが、
素直に、ああいう診療所があればいいなぁ、と思いますね。
患者さんの話を聞き、お茶を飲み、ともに笑い、
ゲーテの詩を引用をして歌を歌う。
人の心というのは、ちょっとしたことで
元気になるきっかけをもらえると思います。
また、ゲーテ先生のセリフには、胸に響く言葉がさりげなく
隠されていて、 結果としてその人の視点を変化させて、
生き方の全般のカウンセリングにつながるというか。
あのお芝居を観て、美味しい食事をしながら一時を過ごすことで、
観客のお客様も癒され、元気になって帰って行かれるよう感じます。
終演後カーテンコールの一体感などは、他の舞台で体験したことがないような
ものすごいエネルギーがあり、出ている側も毎回圧倒されるほどです。
また、井川監督は個々の役者に当て書きをするのがとても得意な方だと
思いますが、その役者が恐らく誰にも言ったことがないであろう心の内が、
当て書きされた役の中に滲みでていたりして、驚きますね。
ゲーテ先生シリーズも然りで、一見ぶっとんだ物語や舞台設定では
ありますが、役者の心の内がきちんと役柄に描かれているからこそ、
ある種のリアル感が出ていると思います。
―カフェマメヒコという場所の魅力について。
自分は子供の頃からずっとダンスをしていて
学生時代は芸術と社会の関わりについて研究していたこともあり、
芸術がどう世の中に受け入れられるか、ということに
とても関心があります。
人間が生きていく上で芸術は絶対に必要だと思っていますが、
その芸術は日常社会との接点がきちんとある場所で表現されることで
より生きる、と、感じてきました。
マメヒコは空間そのものが芸術的雰囲気を備えており、
かつカフェという日常をきちんと営んでいます。
そういう場所で舞台や映画のような芸術が生まれるというのは、
自分にとっては正に理想の場所でした。
そんな場所での舞台や映画に関わらせていただいていることを
とても幸運だと思っています。
井川さんの人を惹き付ける場所を創れる才能や、
マメヒコという場を最大限に生かして
クオリティの高い映画や舞台作品を作り上げる力については
まさに天才的だなぁ、と、思います。
―井川監督の演出や人柄について 。
役者を信頼して任せる力は凄いと思います。
私はゲーテ先生の舞台を経験するまでは、
台詞や段取り等を丁寧に頭に入れ、つけられた演出その通りに
”きちんと” 演じたい、と、思ってきました。
でも井川さんに、それではつまらない、と、はっきり言われました。
多少不安定でも心の柔らかい状態で、お客様と楽しい時間を共に過ごす。
その日のお客様に合わせて、臨機応変にやりとりするほうが面白くなるよ。
と、言われて。。。
ある意味台詞も演出も忘れて舞台に立ってから、
その日のお客様にあわせて演技やセリフ、キャラクターの性格までをも
全般的に変化させる、ということも試してみました。
結果として、お客様とのコミュニケーションが前よりできるようになり、
舞台がググッと変化しました。
私自身、自分の価値観を大きく変化させないとできないことで大変でしたが、
それは同時に井川さんが役者本人以上にその人を信頼してなければ
出来ないことであり、これを本番でやらせるのはすごいことだと思いました。
また、井川さんは、役者には自分の想定したことを超えてきてほしいと、
常に思ってるように感じます。それを日々新しく提案できるかどうか。
役者もスタッフも常に試されていて、それに対する危機感のようなものを
抱えて舞台に立っています。
特に自分には、歌や演技の技量はないので、常に崖っぷち、捨身です。
ハードではありますが、毎回の舞台の充実感は相当なものです。
お芝居をはじめたばかりであった私に大きなチャンスを与えてくださったこと
そして新しい価値観を見せてくださったことを、とても感謝しています。
―クラウドファンディングに参加されている方々や、
この映画を応援して下さる方々へのメッセージをお願いします。
北海道ロケとクラウドファンディングのラスト一週間の期間が被り、
監督や多くのキャストが北海道にいる中で東京で広報を担当しました。
慣れない広報でしたが、たくさんの方に支えていただきました。
FBやツイッターでの応援のコメントやシェアを
たくさんの方がしてくださいましたし、
口コミで広げてくださった方もたくさんいらっしゃいました。
関連のイベントに参加して下さり盛り上げてくださった方々にも
心から感謝しています。 皆様のお心遣い本当に励まされました。
クラウドファウンディングにご参加くださった方々には
心から感謝しています。
本当にありがとうございました。
ご参加頂いた皆様の期待に添うような
素晴らしい作品になると信じていますので、
映画の完成まで、どうぞ楽しみになさっていて下さいね。
インタビュー担当:松田