渡辺定路さん:出演者インタビュー
vol. 88 2015-10-25 0
今回のインタビューはソラ役の渡辺定路さんです。
(※インタビュー前半1つ目の質問内に一部役柄に関する
記述があります。ネタバレを避けたい方はお気をつけください。)
定路さんは普段はプロのサックス奏者として
音楽家活動をされていますが、演技経験は全くないとのこと。
そんな中で「口の利けない音楽家」という大役を
見事に演じられました。
―ご自分の撮影を終えての感想をお聞かせください。
8月に役者陣で台本読みがありましたが、
その時点ではソラという人物は自分の性格とは全く違う、
特異な人間だと感じていました。
その時点で井川監督には「どう演じたらよいか」
という質問を何回かさせて頂きましたが、
具体的なイメージはなかなか掴めなかった、というのが、
正直なところです。
一方で、ソラという人物についての考察はつづけました。
ソラ自身が子供時代のあることが原因となって
口がきけなくなってしまい、家族や周りの人を巻き込んでしまう、
という状況設定はある意味理解できます。
他方で周囲とソラのことを考えると、口がきけない
という状態で周りに受け入れてもらえているというのは、
ある意味、周りの人に甘えている、とも言えます。
役を考える上でこの「人に甘える」ということは
どういうことなのか、ということを考えました。
その中で「信頼感」というのが一つの鍵になっている
と思っています。
メイがソラを信頼してある出会いをつなげ、そこからできた
新しい信頼関係が物語の後半の展開につながっていく。
この「信頼」というものが、話が展開していく上での、
そしてゲーテ先生という存在の重要な要素となっている気がしますね。
現場ではメイさん役の二宮芽生さんご自身の人柄もあり、
役者として自分と二宮さんとの信頼関係を
早い段階で築くことができたのも、役作りの上では
大きかったよう思います。
そして撮影が終わった今ではソラという人格の中に
自分に当てはまる部分を見出しており、井川監督の人を見抜く力に、
改めて驚いています。
―井川監督の作品、もしくは人柄について。
実は井川監督の作品は拝見したことがありません。
自分自身がマメヒコのイベントである「音楽家の夜話」に
ゲストとして出演させて頂いて、そのまま映画出演のお話しを頂いた、
というのが経緯です。
ただ、井川監督の人柄については凄いと思います。
何といっても人を巻き込む力がある。
現在北海道でハタケを営んでいるヒロ役の相澤さんであったり、
ゲーテ先生というキャラクターを引き出された増原さんであったり、
僕自身も映画出演のお話を頂いたり。
そういう風に人を巻き込んで流れをつくることが出来る人で、
とても尊敬します。
また、今回の映画についても、マメヒコというカフェについても、
同じことが言えますが、井川監督が何かモノを創るときの、
細部へのこだわりを感じます。
本当に良いものを知らないと出来ないことばかりですし、
それを次々と具体的な形にしていく井川監督の姿は、
ただただ凄いなと思うばかりです。
―音楽家としてのご自分の職業が、役作りの上で
影響を与えたことはありますか?
台本を読んでも、ソラが音楽家であるというイメージは、
実際はつきにくかったというのが、正直なところです。
ただ、楽器をやっているから自分を表現できる。
それがあるから、敢えて言葉を話す必要性を感じなかった
という心情は、理解することができました。
自分はサックス奏者なので、ソラが演奏するクラリネットとは
楽器の扱いが異なりますので、撮影では少し苦労しました(笑)
自分には演技の経験はありません。
そして、実際撮影に入るまで、
「(過去に)やったことがないものを、どうやってやるのか」
ということについては、教えてもらわなかった訳ですが、
何かを表現するということにおいて音楽も映画も
根底は一緒なんだな、と感じています。
この映画づくりに関しても、音響であったり照明であっても、
感性も大事ですが、それ以前に技術がなければ、
何かを表現することはできません。
楽器も同じで、まずは技術的なものがベースとなります。
その経験の確かさを、この映画づくりにおいても、
改めて認識しました。
―クラウドファンディングに参加して下さっている方々、
またこの映画を応援して下さっている方々への
メッセージをお願いします。
映画づくりの上では、一つ一つのシーンにすごくこだわっていて、
たった五秒のシーンに一時間も二時間もかけていたりします。
それが全体でつながったときに、万華鏡のように
全てが輝いて見えるのではないか、と期待しています。
映像の美しさはもちろん、それぞれの登場人物の内面の
奥深く掘り下げたところも、全てがつながって
理解できるのではないしょうか。
その意味で、いち出演者としても完成がとても楽しみです。
あと、増原さん演じるゲーテ先生の歌手としての存在感、
そして歌の素晴らしさも、ぜひ堪能して頂きたいですね。
インタビュー担当:松田