馬毛島のマゲシカ、どうなる?
vol. 29 2021-04-29 0
【facebook4/27掲載記事です!】
先月の3月、ヘリに乗って馬毛島上空からマゲシカ数をカウントする調査に参加しました。 ずっと気になってた「マゲシカ、どうなるの?」の答えが、朝日新聞にて4/24に記事になりました。 ズバリひとことに要約します。
・10年前の調査時よりは増えた(280頭→320頭)が、餌場となる下草・森林が衰え、個体群の維持にとって深刻な事態になっている。
マゲシカ研究者の立澤さんは、もっとストレートに言います。 ・防衛省の事業が実施されれば、野生で生き残れるとは考えられない。
ずっと目を背け続けてきた、あの2文字が現実になろうとしています。 絶滅。
私たちは何を失おうとしていますか。 どうか想像してください、私たちにできること。 https://motion-gallery.net/projects/mageshima
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(朝日新聞記事) https://www.asahi.com/articles/ASP4R7HS4P4QTLTB00S...
記事が見られない人のために全文を掲載します。
朝日新聞 2021年4月24日 ■馬毛島保護 計画見直しを 基地設置計画の馬毛島 上空から調査
自衛隊基地設置が計画される西之表市の馬毛島をめぐる環境影響評価(アセス)で、注目されるマゲシカ。30年以上研究を続ける立澤史郎・北海道大学助教に朝日新聞は3月、10年ぶりとなるヘリコプターによる上空からの調査を依頼した。分析の結果とアセスに対する意見を聞いた。(奥村智司)
――調査結果は 上陸調査をした2000年は約570頭で、上空から調べた11年は約280頭。今回は320頭と推定した。頭数は増えているが、生息環境は10年前よりも悪化し、個体群の維持にとって深刻な事態になっているとみられる。
――なぜか 00年代に、島を所有していた企業による大規模な開発が行われ、滑走路様の造成などで島の約4割が伐採、整地された。時を経て下草の回復が期待されたが、今回はほぼ見られなかった。逆に裸地が増え、残された森林部の樹勢が衰えていた。
――シカの状況は 森林でメスと子が過ごし、草原にオスが群れるというすみ分けが本来の安定的な分布だが、それがかなり崩れていた。一方で更地にいるシカの割合が増えていた。面積の減った森林、草原にシカが集中してきた結果、生息場所・えさ場としての質が低下し、環境の悪い更地にあふれ出ている可能性がある。この状態が続けばメスと子の死亡率が上がり、絶滅の確率が高まることが懸念される。
――計画では馬毛島の9割が滑走路や訓練施設を整備する「事業実施区域」になる。シカを区域外だけに置くのか、区域内にも生息域を設けるのか、取材に対して防衛省は「現段階では決めていない」と回答した。 区域内に生息地を設けるとしてもどこに残せるか疑問だ。一連の事業で激減し、寸断される森林にシカが押し込められて、野生で生き残れるとは考えられない。動物園のようにエサを与えて生かすとすれば、もはや野生ではなく、生物多様性保全の観点から許されない行為だ。
――どのようなアセスと保全策が必要か 漁業者による損害賠償訴訟の控訴審判決(2月10日、福岡高裁宮崎支部)で、「鹿児島県の許可なく行われた、森林法に違反する(企業による)開発があった」と指摘された。国はできる限り環境を復元し、その段階を基準にアセスを行うべきだ。マゲシカを絶滅させないための計画見直しも必要になるだろう。
――そもそもマゲシカを保護する意義は 一般にマゲシカはニホンジカの亜種とされている。環境省は「地域個体群」としてレッドリストで扱っており、生物多様性の観点から貴重な存在と言える。何百年もの間、種子島の人々の暮らしと一体になって存続し、歴史・文化の面からも価値が高い。また、これほど小さい面積に数百頭のシカの群れが維持されてきた場所は世界でも例がない。 島での研究が再開できれば、全国で問題になっているシカの個体数管理に新たな知見をもたらすだろう。 国、県、西之表市と市民が努力し、今のまま馬毛島とマゲシカを後世に残すことを考えてほしい。