【ルンタWEB通信004】「涙をチカラに」 13歳で売られたゴマ・ライさん
vol. 5 2018-03-30 0
「涙をチカラに!」 13歳で娼婦街に売られたゴマ・ライさん(39歳)
ルンタプロジェクト代表 中原一博
私が1年前、偶然ゴマ女史に出会ったことが、今回のクラウドファンディングに至る始まりだったと言えよう。一度のミーティングで私は彼女の仕事を助けようと決心したのだった。彼女の中に他の人とは違う緊急の責任感を感じたからだ。それは同じ堪え難い苦しみを経験しなければいけなくなった家族を思いやる気持ちのようなものかも知れない。
ゴマ女史はネパールで初めてのHIV/AIDSの女性と子供を支援する団体であるシャクティ・ミラン・サマージュの創設者であり、今も中心的存在である。「13歳の時インドのムンバイの娼婦街に売られ、半年後に救い出された。しかし、その時すでにHIVに感染していた」というのがこれまで私が知る彼女の略歴の全てだった。彼女のバイオグラフィーの英語版はなく、ネパール語で書かれた数ページの短いものしかないのだった。そこで、彼女の39歳の誕生日という今日(3月29日)初めて詳しい話を聞いた。
話が「売られた」後のことに至ると明らかに彼女は苦しげな表情をみせ、しばらくして「地獄のような日々だった」といい、首を振り、話そうとしなくなった。私もそれ以上そこの話は聞かなかった。「涙をチカラに」の見本のようなゴマさんだが、実は今も夜中にふと思い出し眠れないことがよくあるという。
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ゴマ・ライさんはエベレストを含むサガルマータ県コタン郡の出身。村は山岳地帯の尾根上にありヒマラヤは綺麗に見えるが、水に恵まれずそこに住むライ族の人々は一様に貧しかった。父親は8人も子供を作ったあと、40歳ころに早死にしており、写真もなくゴマさんはまったく父親の記憶がないという。残された母親は8人の子供を守るために一生懸命働いてくれていたが、それでも食料はいつも足りなかった。子供のころから畑仕事を手伝い一度も学校へは行けなかった。
上の兄2人と姉4人が次々と結婚し、母親と下の妹と共に3人が残されたが貧しさは変わらなかった。エベレスト街道方面で登りに8日かかる山道の荷揚げの仕事を何度かしたこともある。でも30キロほどしか運べず、辛すぎることもあり続けることはできなかった。
借金を抱えた母親を助けたいとの思いから12歳の時、一人でカトマンドゥに行き、絨毯工場に雇われた。しかし、そこは酷いところだった。朝から夜遅くまで働かされ、食事は二回のみ。優しくしてくれる人は誰もいなかった。見習いだから、借金があるからと半年働いても、一度も給料をもうことはできなかった。
半年後、一週間の休みがあった。そのころ唯一話相手となってくれていた女性に「ポカラに遊びに行こう」と誘われた。その時、久しぶりに浮かれた気持ちになった。しかし、結局到着した場所は「ポカラではなくムンバイの有名な娼婦街」だった。
最初バスに乗り、車に乗り知らぬ間に国境を越え、列車に乗り、また車に乗った。しかし、ポカラがどこにあるかを知らない少女ゴマは出されるコーラを飲むたびに眠くなり、何日走ったのかも分からなかった。他に2人の少女が一緒だった。
最後にホテルのような部屋に入れられ外から鍵がかけられた。食事だけが運ばれてきたという。数日後突然警察が来て、警察署に連れて行かれた。そこで初めて自分がインドのムンバイという町に来ているということを知った。そこで、一緒に連れられてきていた男が警官にお金を渡しているのを見た。不審に思い、「なぜお金を渡したのか?」と聞くと「お前たちをネパールに返すためにお金がいるからそれを払ったのだ」と言われた。
その日の夜、別の場所に連れて行かれた。酸っけた臭いのする大きな部屋に大勢の女性たちがごろ寝していた。そのまま、その夜をそこで過ごした。朝になり、女性たちが起き上がった。そして中の一人が「お前は売られたんだよ。ここは娼婦街だよ。あきらめな」と言うのだった。よくは分からないが、なんだか恐ろしいことになったと感じ、泣き叫んだ。
そして、その後男たちに強姦された。その時のことは今でも決して忘れられない。その後の半年間、地獄のような日々だった。逃げようとしたこともあったが、見つかり、ひどく殴られた。いつもみんなからひどく殴られたり蹴られたりした。
誰一人優しくしてくれる人はいなかった。朝から晩まで客を取らされて、それでもお金をもらったことは一度もなかった、客がくれたチップもお姉さんたちに盗まれたり取り上げられたりした。外には一歩も出ることができず、窓一つない部屋で寝泊まりし、客が来る時刻になると夕方だとわかるだけだった。
そこにネパール人ばかり35人が暮らし、自分のように若い少女が多かったという...。
(後半へつづく)
シャクティ・ミラン・サマージュ