【ルンタWEB通信003】アンダーワールドから救出されたニシャ17歳
vol. 4 2018-03-23 0
【ルンタWEB通信003】アンダーワールドから救出されたニシャ17歳
ルンタプロジェクト代表 :中原一博
ルンタプロジェクトはネパールの現地団体シャクティサムハと共に人身売買被害者をインドの娼婦街からレスキューするというプログラムを進めている。3ヶ月ほど前に17人の女性を救い出すことに成功したとの知らせを受けた。そのうちの5人がネパールのシェルターに到着してので、その一人に昨日インタビューした。
ラフィクン・ニシャ 17歳
ニシャの故郷はブッダシャカムニの生誕地ルンビニにほど近い場所だ。しかし、今ブッダの教えの力は生誕地周辺には及んでいないらしい。小柄で華奢な年齢よりは幼く見えるニシャは、この世の地獄を経験した。
ニシャの村では半数がヒンドゥー教徒で、半数がイスラム教徒。ニシャの家族はイスラム教徒だった。兄弟は9人で、姉妹7人と兄弟2人。ニシャは末娘だった。家はあったが、それは区切りもないひと部屋だけの小屋のようなものだった。その家から小学5年生までイスラム神学校に通った。
15歳になっていたある日、ニシャは母親とケンカした。家を飛び出し、遠くまで歩いた。イスラム教徒の女性には外出の習慣がない。ニシャはあまりに遠くまで歩いてしまい、道に迷い、家に帰ることができなくなった。
途方にくれながら道を歩いているとトラックがそばに停まった。聴かれるままに道に迷ったというと乗れという。中には数人の男がいた。しばらく走った後、トラックは止まり、ニシャはなす術もなくそこで男達に強姦された。
トラックは走り続け、国境を越え、着いたのはインドの首都だった。そのまま、アパートのようなところに監禁された。そして、家主が連れてくる男達の相手を、毎日強制されたのだった。1年間も、部屋に閉じ込められたままだった。
1年ほどたったある日、突然警察が現れ、ニシャは無事に保護されて家主は逮捕された。
それから裁判が行われ、半年ほど政府のシェルターで過ごした。シャクティサムハが身元引き受け団体となり、今年1月14日にネパールのシェルターに無事到着した。家族にはもちろん連絡したが、家が貧しいため「今はできるだけシェルターにいてほしい」という返答だったという。
私がニシャに話を聞いている時、子供の頃の話はすすんでしてくれたものの、トラックの男たちに誘拐された話になると沈黙した。聞き取りに同席した女性スタッフが、困惑した様子の彼女に「席を外してもいいよ」と促した。「あの先は男の人には話しにくいのです」とスタッフは私に伝えた。そのためスタッフがニシャから聞いた話を、のちに説明してもらった。
最後に再びニシャを呼んでもらい、私が「本当に大変だったんだね。でももう大丈夫。ここは楽しい?」と聞くと、「すごく楽しいわ」と明るく答える。彼女は数日前からルンタが支援しているハンディクラフト部で見習いを始めたという。「いまから何をしたいの?」と聞くと、「仕立ての仕事ができるようになったらまた故郷に帰ろうとおもう。今のまま帰っても家族の迷惑になるし」とはっきりした声で答えてくれた。
シェルターでの暮らしは始まったばかり。安心を得て、生きる希望と手段を見つけ、自立への道を進んで欲しい。