「些細なこだわり」【特別記念トーク 採録②】
vol. 25 2019-10-30 0
<鼎談>
太田啓子弁護士
平井早紀(映画「些細なこだわり」 主演)
舩橋淳 (映画「些細なこだわり」 監督)
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被害者がトラブルメーカー扱いされる社会
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平井:いじめとかでも言えることだと思うんですけど、自分が自意識過剰なんじゃないかとか。それをポロッと言うことによって「自意識過剰だよ」と外側から言われたりということで、さっきの自分が性的なそういう立場に立っているということにショックを受けるというのと同時に、相手や、周りに対して、私は自分が性的にこの人に見られていると思っていますということを公表することでもあるのでっていうのは…。
とっても、それこそ社会の女性の性的なものに対するタブー意識意志みたいなのはあると思うんですけど。「そういうふうに見られていると思ってるお前が、スケベなんじゃないか」とか。そういうのはありますし。
太田:「何をやらしいことを考えてるんだおまえって、言われるだろうな」と想像しちゃうみたいなね。
平井:そうなんです。ワーッて私が泣いていて、みんなが「それは違うよ」とか、いろいろ言われているシーンがあったんですけど。その中でも、出てきてたんじゃないかなと。
「勘違いなんじゃない」とか。そこまで言うことでもないじゃないみたいな言葉が出てきて、そういう言葉に2次的に傷つくじゃないですけど。そういうことがあって。「いや、でも、これはじゃあ、勘違いだと思っていたほうが、私の中で収めていたほうが、私のほうが悪かったんじゃないか」いう揺れはあって。
でも、私は、実際傷ついているのは芝居をしながら、すごく思っていたところではありました。「どうして、分かってもらえないんだろう。でも、この人たちの意見も多分、間違ってない」「いや、でも間違ってると言わないと、私が間違ってることになっちゃう」とか。
そこは、どちらが正しいかみたいになってきちゃったのは、怖かったですね。演じながら。
舩橋:「なんでこれを問題視してるの」と。また違った論理を持って来たりとかね。
平井:そうですね。
舩橋:「職場の和を乱す気?」みたいな感じにもなって。
平井:そんなつもりないのにっていう。
太田:結構、古典的な2次加害だと思いますよ。面倒なやつ扱いするみたいなのありましたよね。
平井:ありました。
太田:それは多分、結構あると思います。面倒なやつだと見ちゃう人からみると、被害者がトラブルメーカーで、職場の和に対する加害者なんですよね。本当に。
自分じゃなくても、他の人が、何か性被害に声を上げたらば、えらいバッシングに遭うというのをどこかで私たちは見聞きして、無意識に学んでしまっているところがあると思うんですよ。だから、自分自身が被害にあったとき、もう、声を上げたら絶対に嫌な思いをするということが咄嗟に脳に浮かんで、なぜかあらかじめそれは知っていた、みたいな。
伊藤詩織さんの件とかも、ああいうことへの被害者バッシング、被害者への2次加害というのは、そういうふうに、「声をあげるとこういう目にあうぞ」という社会内へのアピールになってしまって、本当に将来の被害者の声も塞ぐ効果があると思っているので、そのことがすごく問題だと思っています。
学んじゃうんですよね、潜在的に。性被害に正面から声をあげるとああいう目に遭うんだなというふうに、さらし上げられている人を見ると学んじゃうというのは、すごく問題。
そうじゃなくて、声を上げたら必ず誰かが、援護射撃してくれる、孤立してしまうことはない、そういうこともまた、学ばせる社会じゃないと、次に声を上げる人が生まれないだろうなとすごく思いますね。
舩橋:平井さん、自分の状況や立場から言い出しにくさを感じるときってありますか。
平井:言い出しにくさはありますね。さっき、一番初めに言っていた身体的なところではなくて、格差的なものとか。
立場的なものというのは、その人本人に言えないというのもありますし、「この人にそういうことをされている」というのは、それを言ってしまうことで、この人をおとしめることになるっていう。
太田:そうね。「相手の立場を考えてしまって言えない」みたいなね。
平井:会社間であったりとか、仕事上の付き合いがあるからこことの縁を残すためには、この人に、そういうことを私個人がされていることは、我慢しなきゃとかというのは、よく聞く話でもありますし、私自身もバイトでありました。
舩橋:それは相手がそれを利用しながら言ってきてるなということもありますか。
平井:私が経験した実体験だと、利用されているというわけではなくて、多分それは分かってない。
舩橋:本人は分かってない?
平井:それはただ、お遊びというか。「ちょっとしたしゃれ、冗談じゃないか」という話だと思って。
でも、それでは、通用しないレベルに私は傷ついたりもするというのは。
太田:無自覚かもしれないけど地位関係を利用しているというのはあると思いますよ。
平井:無自覚…。
太田:例えば相手が同じ、若い25歳の女性であっても、それが自分の部下の女性なのか、自分の取引先の重役の娘なのかで違うと思う。無意識にであっても、相手と自分の関係性を見定めているんですよ。
それを自覚してない人は意外といると思いますけども、社長の娘なのか、自分の部下かで、絶対に態度は違うと思う。
平井:確かに危機感は違いますよね。これをされて、もし何か言われたら、自分が終わるという感覚はないからそれは言えるのかもしれない。冗談という形で。
太田:だからハラスメントがなかなか、なくならないとすれば、それはハラスメントが加害者が痛い目に遭わないできたからですね。やっぱり痛い目に遭わせないといけないと思う。
平井:やっぱりそうなんですね。
太田:それはそうだと思う。
舩橋:どっかの大臣が言っていましたが、セクハラという罪はないらしいですからね。