「動き出す物語」 赤井都さんからのメッセージ
vol. 15 2024-12-10 0
クラウドファンディングも残すところあと11日となりました。
おかげさまで96名の方々から応援いただき、応援額は現在78%まで達しております。
ありがとうございます!
ここからあとひと息、ふた息がんばります。
残り11日間、発信を続けてまいります。
よろしければ、周りの方々にシェアいただけたらとてもうれしいです。
引き続き、応援のほどどうぞよろしくお願い致します!
今日は、『航海記』の作者である赤井都さんから、
航海記についてのエッセイが届きました。
『航海記』はどのように生まれたのか、そして、
物語とは、本とはなんなのか。
赤井都さんの願いが込められたエッセイです。
どうぞご一読ください。
よろしくお願い致します!
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動き出す物語
“この物語は、海の上で、おーい、おーい、と呼びかけ合う話。
私はこの物語を、今はもういない人から聞いた。
私がしたことは、覚えていた対話を物語にして、人に伝えたこと。
私がもらった人間性を、その人には返せないから他の人に渡したこと。”
『航海記』の物語は、若かったある午後に、パソコンを立ち上げて打った話で、人は一人ずつ小舟に乗って声を掛け合うだけなんだ、という、もういなくなった人から聞いたたとえを、記憶しておこうと思って書いた。
数時間で、核心から始めて、終わりまで書いた。そのテキストファイルは時々読み返して推敲を加える幾つかの物語の列に加わり、何バージョンか存在した。推敲といっても、数語を取ったり置き換えたりする程度で、物語の構造は変わらなかった。時間を置いて、違う自分になって推敲しているうちに、これ以上は短くできないなという描写になり、何度読んでもこれは読めるという展開になった。
そのあと私は豆本アーティストとしての登場の場が増えて、忙しくなってそのファイルを読まなくなり、待っていた他の物語の列を順々に豆本にしていき、しかしパソコンのフォルダを開けると、待っている物語の列の先頭にそれがいるようになって、久しぶりに読むと、程よく忘れていた話になっていた。
新鮮に読めるけれど、起伏する感情も含んで書き込まれ、物語が大きい。語数は私の他の作品よりも、そこそこ多い。私に、この物語を本にできるだろうかと思った。それでもついにこれを豆本にする時は今だと、その時の自分で考えた。その時に何とか豆本の形にして、紙の面に言葉を定着させ、めくって読める形にしたから、これは何だろうと思われて人の手に取られて、読まれて、次の版の計画が来た。新装版豆本であり、今まさに作ろうとしている書店版だ。
きっと、物語というものには、そんな性質がある。本の形になることで、形と人との出会いが生まれ、人がその形を誰か別の人に渡すことができる。本は次の出会いにつながる。本には生命があり、読まれることで動き出す。人から人へ、物語は伝って独りで渡っていく。
どこまでも行け、どこまでも届け、と私は願う。
赤井都(豆本作家・ブックアーティスト)
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<プロフィール>
赤井都 Miyako Akai
豆本作家、ブックアーティスト。自分で書いた物語をそれにふさわしい本の形にしたいという思いから、独学で初めて作ったハードカバー豆本で、2006年ミニチュアブックソサエティ(本拠地アメリカ)の国際的な豆本コンクールで、日本人初のグランプリを受賞(MBS book competition distinguished award winner)、2007年連続受賞。その後、10年間かけて、通常サイズの本の西洋伝統的手製本、デコール、書籍の修理と保存をルリユール工房などで学ぶ。2016年、9年ぶりの受賞、また2021年、2022年受賞。
2014, 2017年、Hong Kong Book Art Festival(香港)からの招待で豆本ワークショップ、講演講師。2018年、The Sharjah International Book Fair(アラブ首長国連邦)からの招待で子供向け豆本ワークショップ講師。2019年、豆本に貢献した人として、ミニチュアブックソサエティからのNorman Forgue Award受賞。
著書に『豆本づくりのいろは』(河出書房新社)、『そのまま豆本』(河出書房新社)、『楽しい豆本の作りかた』(学研パブリッシング)。
2006年より個展、グループ展、ワークショップ講師、豆本がちゃぽん主催など。オリジナルの物語を、その世界観を現す装丁で手作りする、小さなアーティストブックの作り手として、また講師として活動中。
今回、自身が書いた物語『航海記』を全国の書店に届けるため、新谷とともにクラウドファンディングに挑戦中。