装画と小物作りを担当するヌイヌイトコネコネさんからのメッセージ
vol. 5 2024-12-29 0
いよいよ年末ですね!
今日は本企画で装画とリターンのオリジナル布小物の作成を担当してくれているヌイヌイトコネコネさんからのメッセージをご紹介します!
ふだんは布の柄のデザインをしているヌイヌイトコネコネさんですが、今回は本の装画とそれとお揃いの柄の小物作りという新しい企画にチャレンジしてもらっています。
本の表紙とお揃いの小物を持つ。ほかにあまりありませんし、ちょっと素敵なんじゃないかな、と思っております。
テキスタイルパターンが専門なので、本シリーズのカバーは「装画」というより、本を包み込む「柄」のようなイメージになっています。
制作の途中の画像も数多くお寄せいただきました。
文章を考えるのとは別の創作の過程を垣間見ることができて、とても興味深いです。
年末年始のお時間のあるとき、画像とともに楽しんでいただけたら幸いです!!
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ヌイヌイトコネコネさんからのコメント
本企画の装画とオリジナル布アイテムの制作を任せていただきましたヌイヌイトコネコネです。
私はデザイン事務所の業務の傍ら、お話しや願いごとが込められたテキスタイルパターン(柄)を描いて、布製品を作るという作品作りをしています。ギャラリーやイベントに訪れた方々に説明すると「柄から描いて制作している」ということに驚かれます。絵画やアートを日常的に使える物に出来ないか?と考えた末のスタイルです。
今回、装画に選んだ3作品は共通して、ほんの一瞬の事を書いているのに、空間的に幾層も深く大きく、そして過去や未来へも大きく広がっていくような感覚がありました。テキスタイルパターン(柄)というのは、縦にも横にも繋ぎ目も無く連続していくのが特徴なのですが、この共通項をうまく作品に活かせればと思い制作していくことにしました。柄が出来るまでの過程をお楽しみください。
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◆へいたさんの作品の為のパターン制作過程
題材に選んだ『「ぴい」と鳴らせば』は成長と共に味わう自身や仲間たちの変化と、不変の川の流れが時間を超えてどこまでも絡みあっていくようで、すぐに柄のイメージが湧き上がってきました。
キャラクターの初期スケッチ
夏の思い出の中のいる、鳥に見つめられ無心に草笛を吹き続ける、無垢さとひたむきさを秘めた少年。そんなイメージを目指して描いていきます。
キャラクター・サギいろいろ。
少年と向き合ったりそっぽを向いたり。流れる川の曲線を引き立てる白鷺をいれました。
嘴は水平、脚は垂直で模様的な表現の左から2番目を採用。
背景・草のパターン制作
1回目のプリントの仕上がりを見て、草のパターンを足すことにしました。
うっすらと染めたいのですが、布には思うように表現出来なくて試行錯誤が続きました。
少年が立つ足元には、数知れぬ葉がそよいでいます。手書きした、編んだように重なる葉っぱが繋がるパターンです。3回のプリントを経て完成しました。
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◆のびさんの作品の為のパターン制作過程
のびさんの柄は表題作とは異なる作品で、「自宅の黒電話が鳴ったので、受話器を取ると聞こえてきたのは「私」の声であった。」という書き出しで始まるちょっと不思議なお話しです。違う世界と繋がるという部分が面白くてパターンにしたいと思い選ばせていただきました。
キャラクター・黒電話
黒電話という魅力的なモチーフをどう配置するか?ブドウ畑に電話が紛れ込んでいる構図や、階段と廊下で違う階層が迷路のように繋がるという案も。
キャラクター設定
黒電話の他にストーリーを感じさせるキャラクターを入れる事に。最初に考えたのは少年、少女。イマジネーションを膨らますのに人物ではなくネコという可能性も考えました。
キャラクターと背景色いろいろ
作家さんのご希望でキャラクターは少年に決まりました。膝を抱え小さく丸くなって電話をとる少年の心情を、見る人が自由に想像出来る余白が必要なので、目や口も表情もない横顔にしています。
背景の色の候補は幾つかありましたが、作家さんに黄色という思いつかなかった色を提案していただきました。結果としてモチーフが引き立ち、夕暮れに1人留守番をしている部屋のようなじんわりした温かみが出ました。
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◆四葩ナヲコさんの作品の為のパターン制作過程
「あの灯りを目指して歩いてきたのだ。吹雪の中をずっと。奥歯を噛みしめて。窓にぼんやり映る橙色の燈火。」という書き出しから心を掴まれました。140字に描きたいモチーフが詰まっています。
キャラクター・旅人
吹雪にさらされる旅人。どんなに長い旅路なのか。何を着せようか?
颯爽と歩いていてはいけないし、ポーズが一番の悩みどころです。
キャラクター・雪
雪や風は手書きしたものを使います。乾きの速い製図用インクで描いてみたり、散らしたりして試行錯誤。ペンタブだと私が思う雪になってくれないので。
雪のない雪原と雪のいろいろ
吹雪が来る前の雪原も好きなので掲載しておきます。
こちらも3回のプリントを経て完成。
同じ画面にいくつもの時間が存在しても、パターンの中ではおかしく見えません。
丘の上で立ち止まる旅人が何を見ているか、どう繋がって見えるかは、その人次第なのも面白さです。
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◆おわりに
人は初めて遭遇する事象について、自分の記憶と結びつけて理解しようとします。ですから、より美しいイメージストックを沢山持っていたいと私は願います。自分の作品を作る時もその記憶のイメージストックから形や色を探していきます。文章を紡ぐ方々はその作業を、的確で美しい言葉によって作品を構成していくのでしょう。感触、時間、感情などという私が持っていない新しい絵の具に圧倒されました。140字というこの短い文章の中に著された事柄でさえ、全てを絵で表現する事は到底出来ないと感じました。パターン(柄)という表現手法で140字小説に広がりを持たせることが出来たのなら幸いです。
ヌイヌイトコネコネ
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