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140字小説の作品集を届けるための新しいレーベルの立ち上げをクラウドファンディングで実現!

新しい書き手たちによる140字小説の作品集を届けるための
新しいレーベルを作りたい

Twitter(現X)からはじまった新しい小説の形「140字小説」。この新しいジャンルの新しい書き手の作品集をシリーズで刊行していくプロジェクトです。

コレクター
44
現在までに集まった金額
436,500
残り日数
10
目標金額 650,000 円
このプロジェクトでは、目標達成に関わらず、
2025年1月31日23:59までに集まった金額がファンディングされます。

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目標金額 650,000 円
このプロジェクトでは、目標達成に関わらず、
2025年1月31日23:59までに集まった金額がファンディングされます。

Presenter
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小説を書いてます。「活版印刷三日月堂」シリーズ、「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、「紙屋ふじさき記念館」シリーズ、「言葉の園のお菓子番」シリーズ、「ものだま探偵団」シリーズ、『東京のぼる坂くだる坂』『金継ぎの家』など。

四葩ナヲコさんからのコメント&自薦作品10編

vol. 4 2024-12-24 0

クリスマスイブの本日は、書き手の紹介3回目!
四葩ナヲコさんのコメントと、自薦作品10編です。

──140字小説のおかげで個人的な想いがどこかの誰かと共鳴するという稀有な体験ができている。

四葩さんの思いと、四葩さんの人生の一瞬を凝縮したような自薦作品10編を読んでいただけたら幸いです!

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四葩さんからのコメント

美容院で髪を切ってもらう最中の雑談で「子どもの頃、何かとっぴょうしもない夢ってありましたか?」と尋ねられました。「とっぴょうしもない?」「例えば僕は、野球選手になりたかったんですが」と美容師は続けました。

子どもの頃なりたかったのは小学校教師ですが、「とっぴょうしもない」には当てはまらなさそうです。そういえば中学生のときにいちどだけ、自分の人生プランをつくるという課題の中で、将来は小説家になると書いたことを思い出しました(というより、むしろこれまでずっと忘れていたのです)。提出したプランにはいかにも中学生らしい大風呂敷で「ベストセラー」や「アニメ化」という言葉もありました。おお、これは紛れもなく、とっぴょうしもない。

実のところわたしは「若いころからずっと小説を書いていた」というタイプの書き手ではなく、まとまった文章を書く時間を持つようになったのはここ数年のことです。十代のころ小説家を夢見ていたことはすっかり忘れていたくせに、大人になってさまざまな夢を叶えたり叶えなかったりした先で、またこうして小説を書いているのはなんだか不思議なことだと感じます。

十代のわたしが思い描いていた「小説家」ではありませんが、少なくとも今のわたしは「小説を書いて読んでもらう」ことができています。とっぴょうしもない夢のとっぴょうしもない枝葉は置いておいて、幹の部分は既にいくらか叶っているんじゃないか。そんなふうにも思いました。

さて、140字小説を書きはじめた頃、わたしはそれを「誰かに読んでもらうもの」だとは思っていませんでした。

わたしが初めて140字小説を書いたのは、ほしおさなえさんが行なっていた140字小説講座でのことでした。講座では作品を提出し合評を行なうため、提出作は「誰かに読んでもらうもの」にほかなりません。それでもわたしはどこかそれを、読者を想定した創作物というより、個人的な記録のための暗号のように感じていました。そのころイメージしていた140字小説が、Twitter(現X)での発表を前提としていたことと関係しているかもしれません。

Twitterの投稿はあくまでも独り言のような「呟き」で、誰かに伝えることを目的とはしていません。…ちょっと違いますね。誰にも伝わらなくてもいいようなポーズをとって、本心では誰かに伝わることを期待しながら、独り言の体裁で呟くのです。あくまで独り言だから全てを説明するつもりはないし、不都合なことはぼかしておいたまま、それでもわかってくれる誰かにはわかってもらいたい。少なくともわたしはそうでした。

わたしにとって140字小説は、日常の呟きよりももう少し深い心情を吐露する手段となりました。「呟き」同様、それは能動的に誰かに伝えるというより、あてもないままネットの海に放り投げるものでした。誰かに読んでもらい、ときには共感してもらえるようになるなんて思ってもいなかった。思ってもいなかったけれど、それは渇望していたことでもあったのです。

その後、テーマやお題に沿った作品を束ねるアンソロジーのために自分の心情からは離れた題材を扱うようになったり、140字よりももう少し長い短編小説の執筆を経て読者を意識した構成にも気を配れるようになったりと、わたしの創作に変化はあったのですが、140字小説ではあいかわらず、身近にあったできごとから着想した自分自身の心の動きをもとにしたものを書くことが多いです。わたしというちっぽけな人間が日々思っただけのことを、わざわざ小説のかたちにして発信している、それがわたしの140字小説です。

これは今までに何度も書いたり話したりしてきたことなのですが、140字小説の面白いところを訊かれたときは、いつも「文字数に入りきらないことは切り捨てるしかないところ」と答えています。何を捨て、何を残すかを選択し研ぎ澄ますことで、書きたかったことの核に迫っていく面白さももちろんなのですが、言葉を尽くして説明することは最初から放棄しているという面白さも、そこにはあると思っています。何もかもを伝えることはできないから、エッセンスだけを受け渡して、受け取った側はそこに自分の想いや考えを投影して読む。誰かに読んでもらうものだと思っていなかった物語が誰かに届くからくりは、140字小説の持つ抽象化と普遍化の力です。わたしの個人的な想いがどこかの誰かと共鳴するという稀有な体験が、140字小説のおかげでできています。

誰に届けるともなしに紡いでいた言葉たちを、このたび本のかたちに編んで、読者に届けていただけることになりました。どうか受け取った皆さまそれぞれの想いをのせて読んでもらえたらと思っています。

とっぴょうしなくもなかった夢の続きで、これからも創作とともに歩んでいきたい。どうぞよろしくお願いします。

四葩ナヲコさんの自薦作品10編


海を見たいとドラゴンが言うので付き添うことにした。ドラゴンは路線に明るくないし、緊張すると火を吐いてしまうのだ。電車が動きだすと、背中の羽が小さくぱたぱた動いた。海まで飛んでは行けないのか尋ねると、ドラゴンは顔を赤くして何か言おうとした。おろしたての帽子のつばがちりちりと焦げた。


ステップ踏んで行こう。つま先立ちで行こう。ふくらはぎが攣りそうになっても痩せ我慢して。軽やかに行こう。踵が地につきそうになったら土踏まずをくすぐってあげる。朗らかな日だ。出発にぴったりの日だ。空には小鳥が鳴いていて、草原には地雷が埋まっていて。ステップ踏んで行こう。一緒に行こう。


朝晩二人で同じものを食べてゆけば、細胞ひとつひとつの組成まで等しくなれるんじゃないかと夢見ていた。わかりあうことが愛なのだと信じていた頃。今は賽銭箱に硬貨を投げ込むように四角い容器に肉や野菜を詰める。どうかまた一日、健やかに過ごせますように。祈るような気持ちで飯を炊き、豆を煮る。


挨拶をしないから。ゴミの日を守らないから。綺麗にお化粧をして夜の街に出かけるから。大人たちは彼女を嫌っていた。私は彼女の部屋に上がって、身支度を眺めるのが好きだった。彼女は出発前いつも小さな缶を振って、自分と私の口に飴玉を放りこんだ。私が人生で初めて覚えた、あれは秘密の味だった。


彼女が幼かった頃、あらゆるものが彼女の友達で、彼女はそれらを親しく自分だけの名前で呼んだ。彼女と心を通わせるために、喜んで使ったへんてこな名前たち。世界のネームプレートは日に日に付け替えられ、空に白く輝くものも今は当たり前の「月」となった。あの小さな女の子は、もうどこにもいない。


四人がけのテーブルに二人でつくとき、あなたはいつも隣に座った。「こういうの普通は向かい合わせになるんじゃないの?」「だって新幹線も飛行機も全部横並びで座るだろう?」遠くへ出かけたことは一度もなかった。二人をどこへも運ばないテーブル席で、わたしたちは何度も、いつか行く旅の話をした。


並べる。積み木を並べる。石を並べる。ミニカーを並べる。花を並べる。地面に顔がつくくらいに体を倒して、真横から眺める。何度でも並べ替える。そして満足げに微笑む。ふっくらとした指先に宿る全能。ああ、今まさしく彼は、彼の世界に秩序を与えているのだ。いつか混沌の社会へと踏み出すその前に。


幸と不幸の総量は一定でなければならないと彼は宣った。一方に傾けば世界は均衡を失うのだと。「だから僕はちょっとした不幸をたくさん発生させることに貢献してるってわけ。世界に奇跡を存在させるために」まずは着替えてきて、と私は静かに言った。彼は頷いて、ソースまみれの両手をひらひらさせた。


遠くに行くための荷造りを、ずっと手伝っているみたい。どこかでひとり泣かないように、あれを入れて、これも入れて、全ては入りきらなくて。何が大切か決めるのはあなただから、その朝が来たら荷物は空っぽのまま送り出す。新しい荷物を揃えていく道中、ほんのときどき思い出してくれたらそれでいい。


街路樹が紅い実をつけた。春の終わり、上を向いて咲く花が羨ましく、苦々しかったのを覚えていた。酷く暑かった夏の間、樹々は実をつける準備をしていたのだ。朝に夕にこの道を通りながら、わたしは何を見ていたのだろう。葉を落とし実を啄ばまれゆく街路樹の枝には、もう新しい花芽がふくらんでいる。

四葩ナヲコさんのプロフィール

1978年神奈川県生まれ。2015年、よみうりカルチャー大森でほしおさなえの140字小説講座を受講、140字小説を書き始める。140字小説サークルlotto140に参加。140字小説アンソロジー『はまぐりの夢』を編集発行。

X https://x.com/nawoko140

140字小説集「はまぐりの夢」のほか、自作の140字小説を印刷したハガキなどのグッズや小さな作品集を作成し、販売しています。

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  • 2000

    ひとくち支援

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 2025年02月 にお届け予定です。
    • 5人が応援しています。
  • 6000

    作品集(1巻〜3巻)のみセット

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 作品集1巻(1冊)
    • 作品集2巻(1冊)
    • 作品集3巻(1冊)
    • オリジナルリーフレット1(1部)
    • オリジナルリーフレット2(1部)
    • オリジナルリーフレット3(1部)
    • 2025年09月 にお届け予定です。
    • 19人が応援しています。
  • 8500

    作品集(1巻〜3巻)+オリジナルグッズ2(ブックカバー)セット

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 作品集1巻(1冊)
    • 作品集2巻(1冊)
    • 作品集3巻(1冊)
    • オリジナルリーフレット1(1部)
    • オリジナルリーフレット2(1部)
    • オリジナルリーフレット3(1部)
    • オリジナルグッズ2(ブックカバー)(1点)
    • 2025年09月 にお届け予定です。
    • 5人が応援しています。
  • 残り19枚

    12000

    作品集(1巻〜3巻)+オリジナルグッズ1(数寄屋袋ポーチ)セット

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 作品集1巻(1冊)
    • 作品集2巻(1冊)
    • 作品集3巻(1冊)
    • オリジナルリーフレット1(1部)
    • オリジナルリーフレット2(1部)
    • オリジナルリーフレット3(1部)
    • オリジナルグッズ1(数寄屋袋ポーチ)(1点)
    • 2025年09月 にお届け予定です。
    • 6人が応援しています。
  • 残り23枚

    12500

    作品集(1巻〜3巻)+オリジナルグッズ3(トートバッグ)セット

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 作品集1巻(1冊)
    • 作品集2巻(1冊)
    • 作品集3巻(1冊)
    • オリジナルリーフレット1(1部)
    • オリジナルリーフレット2(1部)
    • オリジナルリーフレット3(1部)
    • オリジナルグッズ3(トートバッグ)(1点)
    • 2025年09月 にお届け予定です。
    • 2人が応援しています。
  • 残り18枚

    21000

    作品集(1〜3巻)+オリジナルグッズ全点(1〜3)セット

    • サンクスカード(オリジナル栞3種類セット)×1セット
    • 作品集1巻(1冊)
    • 作品集2巻(1冊)
    • 作品集3巻(1冊)
    • オリジナルリーフレット1(1部)
    • オリジナルリーフレット2(1部)
    • オリジナルリーフレット3(1部)
    • オリジナルグッズ1(数寄屋袋ポーチ)(1点)
    • オリジナルグッズ2(ブックカバー)(1点)
    • オリジナルグッズ3(トートバッグ)(1点)
    • 2025年09月 にお届け予定です。
    • 7人が応援しています。