木こりの卵たちへ(著者からのメッセージ)
vol. 13 2021-08-18 0
私は岐阜県の山県市という田舎町で生まれ育ちました。
昔は林業と製材業が盛んな町でした。
サラリーマンを辞めて、岐阜県の森林文化アカデミーという林業学校で学びました。
高知県林業大学校と同じく、毎年現場に担い手を送り出す、林業専修校です。
転職して、今年で10年になります。
岐阜にいた頃も、高知に来てからも、毎日のように木を伐っています。
岐阜では植林の仕事もしました。
苗を一本一本植えながら、
…私がいつも伐り倒してる木も、こうやって昔の誰かが植えたんだなぁ、、、
って、思ったものです。
…この先の未来も、林業の担い手がいてくれて、私が植えた木がちゃんと育ってくれて、その木を誰かが伐ってくれて、また新しい苗を植えてくれたらいいな、、、
なんて思いながら、苗を植えたものです。
私は学校を卒業してから10年来、恩師と文通を続けています。
林業の現場で感じたこと、
楽しいだけじゃないけど、楽しくもある田舎での暮らしの実感、
そうした出来事を、その先生にエッセイ風の文章にしてお便りしてきたんですが、先生はいつもそれを楽しみにしてくださっていて、いつも丁重なお返事をくださいます。
そうしたお返事のなかで先生は、なにかの雑誌のコラムに連載してほしいとか、いつかまとめて本を出版してほしいとか、いつも言ってくれていました。
あるとき、高知県の林業大学校の学生さんたちと一緒に、林野庁の方の講義を受けました。
何十人もいる若い木こりの卵たちと一緒に授業を受けながら、
…この人たちのうち何人が林業の現場に踏みとどまるんだろうな、、、
って、思っていました。
林業労働者の収入は、危険で重労働のわりには、十分だとはいえません。
私の同期も、いまはもう林業を続けていない友人もたくさんいます。
世の中には、林業の良いイメージがたくさん伝えられていますが、
そうゆう情報を見て、林業に夢を膨らませて扉を叩き、巣立っていく学生さんたちが、
現実には厳しい林業の現場で、それでも夢を失わずに続けていけるように、
綺麗事だけではない林業の現場と、林業生活のリアルも、ちゃんと伝えながら、
挫折しそうになったときに、踏みとどまれるように、応援がしたいな、、、
…そう思うようになりました。
それが、この本の出版を決意したきっかけです。
木こりの卵のみなさん、私は、
木こりになって、良かったよ!
姫榊ソヨ子